家政婦アミ子の物語8 (告白) |
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チャンミンはドアを背に床に座ったまま眠っていた。 |
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アミ子はなるべく音を立てない様に朝食の準備をしていた |
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絶対に首だわ・・・・あんなにチャンミンさんを怒らせてしまったんですもの |
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お二人に出会えて、凄く幸せだった |
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たくや・・・やっぱりママは幸せになっちゃいけないみたい・・・ |
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あなたを置いて家を出た罰よね。 |
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死ぬまでこの罰は消えないんだわ。 |
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短い間でもお二人と幸せな時間が過ごせた事に感謝しなきゃ・・・グスッ |
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あ、ダメ。また泣いちゃうわ。 チャンミンさんに怒られるわ・・・・ |
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アミ子は大きなタオルで鼻と口を塞ぎながら料理を作った。 |
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ただいま〜〜〜〜アミ子さーーーん!! |
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ユンホですよーー帰って来ましたよーーー |
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あ、ユンホさんだわ! あの写真集そのままの爽やかな優しい笑顔。 |
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ウウ・・ユンホさん・・・ |
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アミ子さーーーん。ユンホは嬉しそうに笑って、挨拶のハグがしたかったのだろう・・・ |
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大きく両手を広げた。 |
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しかし、アミ子はおじぎをした。 |
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ユンホさん、おかえりなさいませ。お仕事大変ですね。 |
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お食事の用意が出来ておりますが、すぐに召し上がりますか? |
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台詞の様に一本調子でアミ子は言った。 |
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えーー何?何?アミ子さん冷たいなぁー |
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陽気なユンホは気にせずアミ子に近づいて、ギュッとハグした。 |
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会いたかったですよぅー アミ子さん。 元気にしてましたか? |
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両肩をつかみ アミ子の顔を覗き込んだユンホはびっくりして声をあげた。 |
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アミ子さん!どうしたんですか?いったいたまねぎ何個剥いたら |
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そんな顔になるんです?? |
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ヒョン! やっと来たの? |
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二人は軽くハグをした。 |
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やっとって、チャンミナ。これでも早く来たほうだよ。 |
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全然遅れてないし! |
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おいおいおい、チャンミナまでたまねぎ剥いたのー?? |
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チャンミナーその顔・・・今日は打ち合わせと練習だからいいけど、 |
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撮影なら、罰金ものの顔だよ! |
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いったい二人でどうしたの? |
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殴り合いでもしたの? |
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アーハッハッハ |
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いつもなら、少しうっとおしく感じる事もあるユンホの明るさが |
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今は救いだ。 |
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一気に家の中のどんよりとした空気が |
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晴れ渡る夏の空のように明るくなった。 |
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あーやっぱりアミ子さんの料理は美味しいなぁ〜 |
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チャンミナいいよなぁーずっとこんなの食べてたんだろ? |
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ぽく、予定変えて日本に来ようかと思いましたよぅー |
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ありがとうございます。ユンホさん。 |
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アミ子は腫れた目でチャンミンをチラチラ見たが |
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チャンミンは一度もアミ子の方を見ずに、おかずとユンホだけを |
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目で追っていた。 |
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さすがのユンホもこの異常な雰囲気に普通ではない何かを感じ取り・・ |
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ねぇーーいったいどうしたの?二人共変だよ?? |
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チャンミナーおまえ韓国にいる時は僕が先に行って |
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アミ子さんの美味しいご飯独り占めしてきますよ。ハッハッハ!! |
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なんて言って、楽しそうにしてたじゃないかー |
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独り占めに出来なかったのかい? |
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内田さんに邪魔されたとか? |
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そんな事で拗ねてちゃダメじゃないかー |
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・・・・違いますよ・・・ |
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うん? 違うのか? |
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すみません!!ユンホさん 私が悪いんです!ほんとに申し訳ありませんでした。 |
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チャンミンさんが怒られるのは当然なんです。 |
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首になっても仕方のない事なんです。 |
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ほんとに申し訳ありません。 |
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アミ子は何度も何度も頭を下げた。 |
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やめろよ!!違うって言ってるだろ!!! |
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バーンと机をたたいて、チャンミンは部屋に消えた。 |
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チャンミナ!!! 何だよ。おまえはほんとに短気だなー。 |
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ユンホはまぶたが倍以上にふくれあがり、目が目でない状態になっても |
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まだ、泣いているアミ子に理由を聞いた。 |
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・・・・・・・そんな事?・・・・・ |
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ほんとにそれだけですか??アミ子さん・・・ |
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はい、グスグス・・・それだけです。 |
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わたしがオモニだなんて・・・立場をわきまえない事を言ったばっかりに |
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チャンミンさんは怒ってしまったんです。きっとほんとのお母様を馬鹿にされたような気がしたんですわ。 |
こんな私なんかと一緒にしてしまったから・・・・ズルズル・・・ |
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アミ子さーん、もう泣かないで。ユンホは優しくアミ子の背中を撫でた。 |
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大丈夫!首になんかしませんよ。 |
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それにもっと他に理由があると思うんですよ。 |
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いくらチャミが短気だっていっても・・・ |
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いつものチャンミナなら、そんなの軽いジョークで笑いとばしている所ですよね? |
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はい・・・・でも、でもやっぱりそこは言っていい事と悪い事があって・・・・ズル・・・ |
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ワワワ・・・アミ子さん。これ以上泣いたら目がなくなっちゃいますよ。 |
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心配しないで。ちゃんとぽくがチャンミンに聞いておくから。 |
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だから、ご飯作って待っててくださいよ。 |
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いいですか?? |
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わかりましたね? |
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・・・アミ子は黙ってうなづいた。 |
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ありがとう・・・ユンホさん・・・やっぱり優しい・・・・・ |
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じゃぁ行ってきます!アミ子さん!さっき言った事忘れないで下さいよ。 |
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はい、ユンホさん、いってらしゃいませ。 |
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あ・・・チャンミンさん・・・あ、、あの・・・ |
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チャンミンは背中を向けたまま、手をあげた。 |
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それ以上は何も言えずに、アミ子は |
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いってらっしゃいませ。 と小さくつぶやいた。 |
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さぁーチャンミナ!説明してもらおうか! |
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なんで、あんなにアミ子さんを泣かしてるんだよ! |
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可哀想にアミ子さん 目無くなってたぞ! |
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・・・・アミ子さんは何て言ってた? |
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オモニが添い寝しましょうか? って自分が馬鹿な事を言ってしまったって。 |
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自分のお母さんを馬鹿にされたような気持ちになったんじゃないか!?って。 |
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・・・・・ヒョンの顔見てただろ?? |
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はぁ?? |
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だから!アミ子さんヒョンの顔じっと見てたんだろ!? 話してた時。 |
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・・・・???いや、泣いてたから、下向いてたけど? |
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こんな風にヒョンの手握って うっとりした顔してなかった?? |
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はぁーーーー???? チャンミナ いったい何の話してんの? |
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アミ子さん泣いてるのに、なんで僕の手握らなきゃなんないの? |
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ちゃんと分かるように説明しろよ!!!!! |
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それが出来ないから苦しいんだろ! だいたいヒョンがこんな爽やかな顔して |
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あんな こっちおいでよーみたいな おばさんメロメロにするようなポーズで |
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写真に載るからいけないんだよ! |
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そう言いながらチャンミンはユンホのほっぺたを両手でギューっとつねった。 |
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痛い!痛い!痛い!何すんだよ!! |
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どういう意味だよ! チャンミナー なんで俺のせいなんだよ! |
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うるさい!もうしらん!!!寝不足なんだ!!寝るから!! |
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着いたら起こして! |
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そう言ってタオルを顔にかけて、寝てしまった。 |
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えーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!??? |
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なにそれ?? |
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結局理由わかんないよ!!! |
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俺のせい?? |
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なんでーーーーー??? |
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どうしよう・・・今日は何作ろう・・・ |
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ユンホさんは気にしないで!って言ってくださったけど、チャンミンさん出かける時も食事の時も |
目合わせないし、初めて会った時よりもっと怖い顔で・・・・ |
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やっぱり私ここにはもう居れないわ・・・・・ |
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出て行こう・・・・・ |
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あー疲れた。 随分遅くなったね。アミ子さん美味しいの作って待っててくれてるかなぁー |
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楽しみ〜〜〜楽しみ〜〜 |
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チャンミナ!理由はさっぱりわからないけど、アミ子さんの事もう怒ってないだろ? |
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ちゃんと機嫌良くしてあげなきゃ、可哀想だよ。 |
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・・・・別にアミ子さんに怒ってるわけじゃないよ・・・・ |
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怒ってたじゃん!!!!!! すんごく! |
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あれは自分に対して怒ってたんだよ・・ |
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自分? だって、アミ子さん 何度も謝ったけど、部屋から出てきてくれなかったって。 |
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それは!!!!!!!! あの時 俺ドア開けてたらアミ子さんを抱きしめてしまいそうで・・・ |
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・・・・・・抱きしめたくて・・・怖かったんだ。 |
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え!!?? |
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ユンホは驚いてチャンミンの顔を見た。 |
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今にも泣き出しそうなチャンミンの顔はとても冗談を言っている様な顔ではなかった。 |
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・・・・・・:・チャンミナ・・アミ子さんの事好きになったの??? |
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わからない・・・わからないんだよ・・・・ |
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でも、思い出せば、韓国にいる時から早く日本に来たくて、思わずアミ子さんに電話して・・・ |
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日本に来てアミ子さんに会って、いつものように明るくて、楽しくて、優しくて・・・ |
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そしたら、二人きりの夜にドキドキして寝れなくて・・・ |
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・・・・アミ子さんが僕らの写真集見てたんだ。 |
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それがヒョンのページで・・アミ子さんずっとずっとそれ見てて・・嬉しそうに笑ってて |
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胸が痛かったんだ。なんで俺のじゃないんだ!?って、凄く腹がたって。 |
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アミ子さんは俺の事まるで子ども扱いなんだよ。 |
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昨日も、ふとしたはずみで抱きしめちゃって。そしたら、よしよし大丈夫よ。 |
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みたいにまるでオモニがする様に・・・それで余計に悲しくなってたのに |
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アミ子さんが追い討ちかける様に、オモニが添い寝しましょうか?って言ったんだよ。 |
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僕が寝れないからって。 |
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こっちは触れたくて、抱きたくて、モヤモヤしてるのに |
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むこうはまるで子供扱いで・・・・ |
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だから、腹たって、うるさい!!!って言っちゃったんだよ!! |
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これで、わかっただろ!? |
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ヒョン・・・・笑えばいいよ。 |
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まわりに可愛い子山程いて、韓国には彼女もいて、よりどりみどりなのに |
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よりによって、おばさん好きになってさ・・・おかしいだろ。 |
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チャンミンはユンホをじっと見ながら、悲しく笑った。 |
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・・・・・・チャンミナ・・・・・笑わないよ。笑うわけないだろ・・・・ |
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でも、困ったね・・・そんな事バレたら アミ子さん すぐに辞めさせられちゃうよ。 |
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チャンミンはユンホの言葉にハッとした。 |
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そこまで頭が働かなかった・・・ホントだバレたら即効辞めさせられる・・・ |
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内田さん!!!!!!! 二人は同時に叫んだ! |
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ドーナツを頬張りながら運転する内田は へぇ?っとバックミラー越しに二人を見た |
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今の話聞こえた?? |
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チャンミンさんが女の子よりどりみどりなのに、よりによって、日本のおばさんのアミ子さんを |
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抱きたくなった。 って話ですか?? |
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・・・・最悪だ・・・・・ |
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今更ですけど、内田さんってエイベックスの社員ですよね? |
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今の話 言います? |
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アミ子さんの美味しい料理食べれなくなっちゃいますけど・・・ |
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今日もきっと美味しい料理が待ってるんだろうなぁ〜 |
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たぶん、アミ子さんは優しいから内田さんの分もいっぱい作ってくれてますよね。 |
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・・・・・・内田さん・・・・・何話してたか、分かった? |
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いえ、韓国語が早すぎてわかりませんでした! |
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そうですよね!内田さんならそう言ってくれると思いましたよ。 |
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ただいま〜〜〜 |
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アミ子さ〜〜〜ん 帰りましたよ〜〜ユンホとチャンミンですよ〜〜〜 |
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ユンホは大きな声で言ったが返事がなかった。 |
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テーブルの上には美味しそうな料理が沢山用意されていたが |
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アミ子の姿はどこにもなかった。 |
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アミ子さん・・・・ちゃんと待っててって言ったのに。 |
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大変だよ! |
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アミ子さん お世話になりました。って手紙書いてる・・・ |
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どこ行ったんだろ? |
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アミ子さん 家ないんだよ。 そんな急に行くとこないはずなのに・・・ |
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ヒョン!電話してみて。 |
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そうだな |
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呼び出し音がむなしく響くだけで、アミ子は出なかった。 |
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ねぇーこれまだ あったかいよ。 |
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料理を見てチャンミンは言った。 |
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まだ近くにいるんじゃない? |
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近くなら僕らでも探せるかな・・・ |
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内田さんは走れないからここで待っててよ。 二人で探すから。 |
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もし、アミ子さんが帰って来たら連絡してよ。 |
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はい、わかりました。 さすがに内田もこの時だけはつまみ食いはしなかった。 |
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出てきちゃったけど・・・・どこに行けばいいんだろ・・・ |
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家政婦事務所もこんな時間 誰もいないだろうし・・・ |
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あ、電話 ユンホさんだ・・・・ユンホさんごめんなさい。ちゃんと待ってなくて |
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おかえりなさい!て言えなくて・・・・ |
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公園で休もう。あまり歩いてないのに、疲れちゃったわ。 |
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ベンチに座って、荷物の中から写真集を出した。 |
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写真集持ってきちゃった。 |
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あの時チャンミンさんにどれが気に入った?て聞かれて |
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とっさにこのお二人の写真です。って言ったけど・・・ |
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ほんとはユンホさんのこの写真とチャンミンさんのこの写真・・・・ |
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これです!なんて言ったら 何か白い目で見られそうで |
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恥ずかしくて言えなかったわ・・・ |
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写真集には栞紐の他にもう一つアミ子が作った手作りの栞が挟んであった。 |
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かなり深くに。 |
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あ、また電話 今度はチャンミンさんだ・・どうしよう・・ |
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アミ子は早く出なきゃ怒られる!と思い条件反射のように電話にでた。 |
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もしもし、アミ子です。 |
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どこにいるんですか!? 今どこです? |
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すぐ側の公園です。 父親に怒られた娘のように小さくなって、アミ子は答えた。 |
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動かないで待っててください!! ツーツー |
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チャンミンさん、迎えにきてくれるんですか? |
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あんなに怒ってたのに? 私の顔見るのも嫌だったのに? |
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何だか目が回るわ・・・ |
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チャンミンさんに謝らなきゃいけないのに・・・・ |
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あーダメだ・・・・ |
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アミ子はベンチに横になって、気を失った。 |
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写真集を抱いたまま・・・・ |
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つづく |
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