(チャンミンとオモニ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チャンミンさん! チャンミンさん! どうしたんですか? こんなにびしょ濡れで!?

 

内田さんはどうしたんですか? 一緒じゃないんですか?

 

しっかりしてください!チャンミンさん。 早くこれで拭いてください。風邪ひきますよ」

 

「エヘへへヘ!!!  濡れてやった。風邪でも何でもひいてやる!」

 

「酔っ払ってます? チャンミンさん? 笑い上戸ですか? うわ、お酒くさい」

 

 

 

 内田さんはどうしたのかしら…困ったわね〜ユンホさんもまだだし。

 

「チャンミンさん、とりあえず起き上がってください。早く乾かさないと、ほんとに風邪ひいちゃいます」

 

「いいんですよ。風邪ひいても。もうあんな監督と一緒に仕事したくないんです。ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

 

「ダメですよ。そんな事言っちゃ!そうだ、チャンミンさん美味しいサムゲタンが出来てますよ。

 

身体が温まりますよ。 ユンホさんがチャンミンさん疲れているから作ってあげてって、言ってましたよ」

「ヒョンが・・?自分だって疲れてるのに、この前の忙しいスケジュールの合間に撮影現場に応援に来てく 

 

れたんです。来なくていいから!って言ってたのに。いつもいつもそうやって、自分の事は後回しにして」

 

チャンミンは鼻をすすり出した。

 

あら、今度は泣き上戸?

 

 

 

「さぁ、チャンミンさん起きてください」

 

そう言って、手を出したしのぶを、チャンミンはじっと見た。

 

「…誰でしたっけ?」

 

 

そこからですか!?

 

 

「家政婦のしのぶです。はい、起きてください」

 

「フッフッフッフ・・・・冗談ですよ。しのぶさん。サムゲタン出来てるんですか?はい、起こしてください」

 

寝転んだままチャンミンは、両手を伸ばした。

 

「チャンミンさん・・・早く拭かないと」 よいしょ…細いのにやっぱり男の子ですね、重い…

 

「ヘッヘッヘッへ  早く拭いてくださいよ〜風邪ひくじゃないですか〜」

 

チャンミンは、起き上がりはしたが、じっとしたままだった。

 

全身ずぶ濡れで、髪からはしずくが垂れていた。

 

 

 

「チャンミンさん、そんな子供みたいな事言わないで。早く自分で拭いてください」

 

「実はまだ子供なんですよ〜 オモニー へへへへ」

 

「はい、はい、じゃぁ拭きますよ。後で怒らないでくださいよ。

 

あのーチャンミンさん脱がないと…着替え持ってきましょうか?」

 

「部屋にありますから、適当に持って来てくださいよ―」  チャンミンが叫ぶ。

 

 

 

 しのぶはチャンミンの綺麗に整理された部屋から、着替えを持って来て渡した。

 

「チャンミンさん、はい、早く脱いで着替えないと…シャワー浴びますか?」

 

「無理!!!」   チャンミンは手をブンブン振って拒否した。

 

「まぁこんなに酔って、よく一人で帰ってこれましたね。内田さんはどうしたんですか?」

 

「ヒョン迎えに行くからって、ぼくはタクシーに乗せられました〜〜〜。ヒャヒャヒャヒャ」

 

「タクシー乗って帰ってきたのに、どうしてこんなにびしょ濡れなんですか?」

 

 しのぶは半分怒りながら聞いた。

 

「頭きたから、マンションの前で座って、雨にうたれてた。そしたら、急に腹減ったから、帰ってきました!」

 

 訳もなく敬礼している。

 

「何か、あったんですね。 どうしたかはわかりませんけど、服着替えて、ご飯食べて下さいね。

 

もう〜こんなに濡れちゃって・・・子供なんだったら、いいですね? 脱がしますよ? はい、バンザーイ」

 

 チャンミンは、しのぶの言うとおりにバンザイして服を脱がされた。

 

 フフフ…可愛い。バンザイしてるし。素敵な胸筋…腹筋も割れてるし。

 

「はい、チャンミンさん、これ着てください。はい、手通してくださいね。バンザーイ」

 

おもしろい。何回もやってみようかしら? ウフフフ…

 

「髪も拭きますよ! もう後で怒ったって知りませんからね!」

 

 

 

 

ゴシゴシ…ゴシゴシ…

 

 

「痛いなぁ〜しのぶさん」

 

ゴシゴシ…ゴシゴシ…

 

 

“ママ〜痛いよ。もっと優しく拭いてよ〜”

 

しのぶの脳裏に、幼い息子の姿が、フラッシュバックしては消えた。

 

ゴシゴシ・・ゴシゴシ・・

 

 

「痛い!痛い!痛い!痛いってば!!しのぶさん!!聞いてんの?」

 

「あ、すみません。チャンミンさん。ごめんなさい。ちょっと、昔の事思い出しちゃって」

 

「何?昔の事?どうしたの?」

 

「いえ、何でもありません」

 

 

 

「それより、チャンミンさん、立って!立てますか?ズボンもビショビショですよ。

 

どうします?  チャンミンさん…私は全然平気ですよ。さすがにそれは困るでしょ、チャンミンさん。

 

フッフッフ…だから、早く着替えて来て下さい。サムゲタン温めますから」

 

「出来るもんなら、やってみなよ!」  チャンミンは不敵な笑みを浮かべて言った。

 

「お、そうきましたか…チャンミンさん…わたしはヘルパーもしてたんですよ。下は赤ちゃんから、上はお

 

じいちゃんまで、いろんなのを見慣れてるんですよ。さすがにこんな、活きの良さそうなのは久しぶりですけ

 

どね。じゃ、失礼して」

 

 しのぶは平気な振りをして、チャンミンのベルトに手をかけた。

 

「ギャー  参った。参った。 嘘ですよぅ〜着替えてきますよ〜」

 

 チャンミンはすばやく走って部屋に駆け込んだ。

 

 な〜んだ。ちゃんと歩けるんじゃないですか!

 

 

 

「しのぶさ〜ん、お風呂沸いてるの?」  チャンミンは部屋の中から叫んだ。

 

「だから、最初からそう言ってるじゃないですか!!早く身体温めてきてください!!」

 

完全に母親のように、しのぶは怒った。

 

「チャンミンさ〜ん、湯船で寝ちゃダメですよ!遅かったら覗きに行きますからね」

 

「大丈夫ですよ。今のでびっくりして、いっぺんに目が覚めたよ」

 

「フフフ…良かったです。 ではご飯の準備しておきますね」

 

「しのぶさん、ビールもね」

 

「まだ飲むんですか??」

 

「美味しい料理にはビールが必要なんですよ!!」

 

 チャンミンさんたら、酔うと饒舌ね。 ずっと酔ってて欲しいくらいね。

 

まぁお風呂で歌まで歌ってる。昨日の機嫌の悪さが嘘のようだわ。

 

 

 

「ただいま」   ユンホの声がした。

 

「おかえりなさいませ。ユンホさん、今チャンミンさんがお風呂に入っておられます。サムゲタンが美味く

 

出来ましたが、召し上がりますか?内田さんも沢山作りましたから、食べていかれますか?」

 

「 「はい、頂きます」  ユンホが答えた。

 

「しのぶさん、内田さんは新婚だから、愛する奥さんの所にすぐに帰らなきゃいけないんですよ」

 

「まぁ、そうなんですか?内田さん結婚なさってたんですか??」

 

なのに、ハンカチは洗って貰えないんですね??

 

しのぶは、そう言いそうになったがグッと堪えた。

 

「ヒョン〜〜おかえり〜〜〜」

 

 お風呂から出たチャンミンは、ユンホを見て、酔っ払ったままの陽気さで言った。

 

「なんだ、チャンミン。酔っ払ってるの??何かあった?」

 

「チャンミンさん、これ、ビールとサムゲタンです。どうぞ、私は部屋にいますので、お二人でごゆっくり

 

お召し上がり下さい」

 

 

 

 しのぶが部屋に消えると、二人は韓国語で盛んに話していた。

 

チャンミンさんがあんなに必死で話してるわ…きっと嫌な事があったのね。

 

それをユンホさんが黙って聞いているわ…

 

 ユンホさん何だか顔色よくないわね…

 

しのぶは部屋に入るまでに二人の様子を観察していた。

 

 

 

 

 

 しばらくして、ユンホがしのぶに声をかけた。

 

「しのぶさん、僕らもう寝ますんで。明日は歌番組の生放送があるので、二人一緒に起こしてくださいね。

サムゲタン、とっても美味しかったです。ありがとう」

 

「はい、かしこまりました。ユンホさん、こちらこそありがとうございます。

 

喜んで食べて頂けると、作る甲斐があります。では、おやすみなさいませ」

 

「おやすみなさい」 二人もそれぞれの部屋に消えた。

 

 

 しのぶは、何となく顔色の良くないユンホが少し気になったが、そのまま自分の部屋に戻った。

 

 

 

 

 

ジリリリリリ・・・・

 

 

チャンミンさん・・・・起きれないのに、鳴らすのね。

 

 

 

 

 

 しのぶは、ドアは叩かずに、即部屋に入り

 

寝ているチャンミンに近づいた。

 

「チャンミンさ〜〜〜ん。朝ですよ〜〜。起きないとキスしますよ!!!」

 

ガバッ   チャンミンは飛び起きた。

 

成功〜〜〜 しのぶはガッツポーズをした。

 

 でも微妙な気分ね。

 

 

 全く変な家政婦さんだな!!こんな人は初めてだよ。フフフ…

 

そう思い、チャンミンは笑った。

 

 

 

 

 

 

 あら?  昨日までは、自分で起きてこられたのに…

 

ユンホさん、どうしたのかしら??

 

 しのぶはユンホの部屋をノックした。

 

「ユンホさん、ユンホさん、朝ですよ。起きましたか?」

 

ユンホの声が聞こえない。

 

「開けますよ」 そこは思いっきりちらかった、男の子の部屋だった。

 

まぁユンホさんはこんなに散らかして…

 

「ユンホさん、朝ですよ」

 

 しのぶは背中を向けて寝ているユンホを覗き込んだ。

 

ユンホは真っ赤な顔をして、大量に汗をかいていた。

 

 しのぶはユンホのおでこに手を当てた。

 

 熱だわ。やっぱり昨日調子が悪かったのね。

 

 あ―私とした事が…お薬でも飲んで貰えば良かったのに。

 

「しのぶさん。おはようございます」 苦しそうにユンホは言った。

 

「ユンホさん、お熱があるようですよ。内田さんに電話してみますね」

 

「しのぶさん、大丈夫です。昨日サムゲタンも沢山食べたしね」 ニコッ

 

ユンホさん…こんな時に私なんかに気を使わなくて良いのに。

 

優しい笑顔で笑ってくれて。

 

 

 

 

 

「ヒョン!どうしたの?」

 

 

「チャンミンさん、ユンホさんお熱があるみたいで。内田さんに電話していただけませんか?

 

私、電話を持っていなくて」

 

 

「熱? 大丈夫? ヒョン。 でも今日は生放送だから休めないよ… ヒョン、声出る?」

 

「大丈夫だよ。チャンミン…声はなんとか…出そうだ。 内田さんに病院連れて行ってもらって、注射でも

 

してもらうよ」

 

 

 

「そうだね。それしかないね」 チャンミンも心配気ではあるが、仕方ないという感じで言った。

 

 

 

 

 

大変なのね…芸能界も。