(責任)

 

 

 

 

 

 ヒョン、体調悪いのに約束あるって…誰なんだ?

 

聞いてないし…気になる…すごく気になる

 

嫌な予感がする。   チャンミンはイライラした。

 

 

 

 

 

「ハァハァハァ…チャンミンさん、おはようございます」

 

「内田さん、階段でも走ってきたんですか?」

 

「いいえ、普通に運転してきただけです。ユンホさんの具合はどうでしたか?」

 

「あ?え? 熱は下がったようです」(僕は今、違う事が心配なんですよ)

 

「そういえば、どうして、上がってきて様子みなかったんですか?」

 

「職務怠慢ですね!内田さん」   チャンミンは最近覚えた日本語を使ってみた。

 

「いえ…あの…しのぶさん怒ってませんでしたか?」内田はオドオドした様子で聞いた。

 

「しのぶさん?どうして?内田さんに?何も言ってなかったですよ」

 

「あーそういえば、サムゲタン連絡不足ですみませんって、僕には言ってましたけど」

 

「連絡不足?連絡不足?あー連絡不足だったんですね、そうです!そうなんです!

 

しのぶさんの連絡不足だったんですよ!」

 

…へんな内田さん…

 

 

 

 

 

そんな事より、ヒョンもう起きたかな。

 

電話してみよ。

 

 

「あ、もしもし…ヒョン?熱下がった? うん、うん、そうだよ。

 

 

しのぶさんがずっと側で看病してくれてたよ。

 

ヒョン、今日休みだから、家で寝てたほうがいいよ。

 

うん、そうしなよ… じゃあね」

 

 

ヒョンが嘘ついた。ほんとは出かけるんだろ、ますます怪しい。

 

 

 

チャンミン、すまない嘘ついて。   電話を切りながら、ユンホはチャンミンに心の中で謝った。

 

 

 

 

 

「ユンホさん、どうかなさいましたか?電話チャンミンさんからですよね?

 

心配されてるんですね―ほんとに仲がよろしくて。でも、今日ユンホさんが約束があって、出かけるって

 

言ったら、すごく怖い顔なさって、機嫌が悪くなってしまったんです。

 

私、余計な事言ってしまいましたか?」

 

「しのぶさん。そうですか、言ってしまったんですね、もし後でチャンミンに聞かれたら、やっぱり僕は

 

出かけなかったって、言って貰えませんか?ゆっくり家で寝てたって」

 

「はい、わかりました。でも、私あんまり嘘つくの得意じゃないんです。目はつり上がるし、鼻は膨らむし

 

もしも、バレてしまったら、すみません」   しのぶは申し訳なさそうに、頭を下げた。

 

 

 

ハッハッハッハ  ハッハッハッハ

 

「ほんとにしのぶさんはおもしろいなー。鼻膨らんじゃったら、仕方ありませんよね。

 

すみません。無理なお願いして、でも今チャンミンは映画の撮影が大変だから、僕の事でまで心配

 

かけたくないんです」

 

「ユンホさん・・優しいんですね。

 

私、頑張ります!チャンミンさんに聞かれたら、顔隠して話します!

 

でもユンホさん…あの…チャンミンさんが心配する様な事なんですか?

 

お友達に会うんじゃないんですか?」(てっきり恋人のテオさんかと)

 

「そ…それは…そうです。そうです。友達に会うんですよ…」 明らかにユンホは動揺していた。

 

「ユンホさんも鼻膨らんじゃってますよ」   しのぶはユンホの顔をじっと見た。

 

 

 

「スタッフさんも一緒だから、大丈夫ですよ」   ユンホは安心させようと、必死で言った。

 

「そうなんですね?内田さんですか?」

 

「内田さんはチャンミンと一緒に大阪ですよ」

 

 じゃぁ昨日の方かしら?  ユンホさん熱あるのにさっさと帰った人。

 

 まぁいいわ。誰かと一緒ならね。     

 

 

 

「ユンホさん  クッパが出来ていますよ。

 

召し上がりませんか?食べて、お薬飲んで下さいね。

 

サムゲタンは残り全部、チャンミンさんが食べちゃったんですよ」

 

「わぁーこれもすごく美味しいです!」

 軟らかく少しおかゆのような、湯気が上がったクッパをユンホは美味しそうに食べた。

 

「チャンミン、これもいっぱい食べて行ったんでしょ」

 

「はい、朝から5回お替わりなさってました」

 

「ハッハッハ さすが最強チャンミンだ!」  ユンホは楽しそうに笑った。

 

「羨ましいです。あんなに食べても凄く細くて。

 

大食いチャンピオンにも出れるんじゃないですか?」

 

「ほんとですねーアッハッハ」

 

「チャンミンさんは最強なんですか?」

 

 

 

「そうなんです!彼は最強って呼ばれてるんですよ。最強チャンミン」

 

「じゃぁ、ユンホさんは?」

 

「僕は、みんなが知ってる…UKNOW  ユノ・ユンホです」

 

「何だか、お二人共ピッタリですね。チャンミンさん…確かに最強ですものね、いろんな意味で。

 

 

 

 ユンホさん…あの―お部屋はどの程度まで、片付けてよろしいですか?」

 

少し聞きにくそうに、しのぶは尋ねた。

 

 

 

「うわぁー 恥ずかしいな。僕、それ、一番弱いとこです…

 

しのぶさんにお任せします。  すみません。散らかしてて…」

 

「いいえ、いいんです。ユンホさん。

 

それが私の仕事ですから。  でも、必要な物まで、捨ててしまったら困るので」

 

「日本には、あまり大事な物は置いてないと思います。

 

 

 

 そうだ!なんかバタバタしてて、言い忘れてましたけど、明日韓国に帰りますので。

 

ツアー始まるし、チャンミンの撮影は続いているので、行ったり、来たりになると思います。

 

しのぶさん お家はどこですか?」

 

「…ユンホさん…その質問にはちゃんと、答えないといけないですよね。

 

私、いつも住み込みで働いているので…家はないんです」

 

「す・み・こ・み?   家はないって事は 今はここが家ですか??」

 

「はい、そうです」

 

 

 ユンホは、もっと詳しくしのぶの事を聞きたかったが、しのぶは、これ以上は聞かないで下さい、というよう

 

な悲しい表情をしていたので、聞く事が出来なかった。

 

「わかりました。 じゃぁ僕たちがいつ日本に来ても、しのぶさんがずっと、おかえりなさい!って言って

 

美味しいご飯作って、待っててくれるんですね!? 

 

嬉しいです。 きっと、チャンミンも喜びますよ」 ユンホは爽やかな笑顔でそう言った。

 

「ウウウ…ユンホさん  ありがとうございます」

 

「わわわ…しのぶさん、また泣いちゃった…どうして?どうして?」

 

「ごめんなさい、ユンホさん。 これは嬉し涙です」 しのぶは目を潤ませた。

 

「おばさんになると 涙がよく出るんです」

 

「びっくりしましたよ〜しのぶさん〜泣かないでくださいよぅ〜

 

ぽくが泣かしたみたいじゃないですかぁ〜〜」

 

 そうよ…ユンホさん…あなたに泣かされたのよ

 

 ウウ・・ほんとに嬉しい。          心の底からそう思った。

 

 

 

 ピンポーン  玄関のチャイムが鳴った。

 

 あ、スタッフさんかしら?

 

 きっと、そうですね。急いで用意しなきゃ…

 

 ユンホは慌てて立ち上がった。

 

 

 

 

 

 買い物にきたついでに…しのぶは買い物をしながら考えた。

 

 お二人はどんなアイドルなのか、本屋に行ったらわかるかしら?

 

「すみません。東方神起の本ってありますか?」

 

「はい、こちらの韓流のコーナーにございます」

 

「ありがとうございます」 すごい、東方神起、東方神起、東方神起

 

一番多いわ。 やっぱり、凄いのね。お二人の人気は。

 

この写真集素敵。  まぁーこの笑顔。ご飯美味しいって言ってくれた時の顔だわ。

 

二人でゲームしてる時は、こんな顔してたわね。

 

フフフ・・チャンミンさん歯磨きしてる。なぜ写真集で歯磨き?

 

それなら、ほんとの寝起き写せば、もっと機嫌悪い顔してて、おもしろかったのに。

 

まぁ女性をエスコートして…ほんとは子供なんですよぅーオモニー なんて言ってた人が。

 

さすがだわね〜。

 

素は普通の青年なのに、こんなに輝いてカッコいいわぁ〜

 

隣で、食い入るように見ている奥様も、お好きなのかしら?

 

もしかして………………

 

私って、とんでもなくラッキーなお仕事してる????

 

 

 

 

 

その頃チャンミンの撮影現場では…

 

「カット!カット!チャンミン!! おまえ何回言わすねん!ボケ!オーラ消せ!

 

言うてるやろ!?スパイやぞ!スパイがそんなドヤ顔して、どないすんねん!!」

 

「はい、すみません」 (持って生まれたオーラが勝手に顔に出るんだよ!ちくしょー)

 

 

 

 

 

ハァハァハァ……あ―腹減ったな―

 

しのぶさん、弁当作ってくれたらいいのに―

 

今度チャンミンさんのだって言って、頼んでみよ―

 

うちの奥さん可愛いけど、料理へたなんだよな―

 

しのぶさん、教えてやって欲しいよ。

 

あ―ここ暑い!! Yシャツ汗びっしょりだよ。

 

内田はスタジオの隅で汗を拭き続けながら、考えた。

 

 

 

 

 

お疲れ様でした―――!本日の撮影は終了で―す。  撮影スタッフの声が響いた。

 

 

 

 

 

「ハァハァハァ…チャンミンさん、お疲れ様でした。

 

早く帰って、しのぶさんの料理食べましょうよ。

 

腹ペコですよ」    内田が言った。

 

「あれ、内田さん、今日は急いで帰らなくていいんですか?」

 

「今日は奥さん女子会があるとかで ゆっくり帰ってもいいんですよ。

 

だから、早く帰りましょう!」

 

「内田さん、心なしか、いつもより嬉しそうですよ。

 

まぁいいですけど・・・ヒョンの事も気になるしね。

 

しのぶさんに電話して、早く帰るからご飯作っておいて!って言ってくださいよ」

 

「そうですね。僕の分も作ってくださいって、言っておかないとね」

 

 

 

「ハァハァハァ…もしもししのぶさん?内田です」

 

「どうしたんですか?内田さん、階段でも上ってるんですか?」

 

「いえ、新幹線の中です。

 

今日、撮影早く終わったんで、今から帰ります。

 

僕の分もいっぱいご馳走作って、待っててください」

 

「内田さんの分も? 奥さんはいいんですか?」

 

「今日はいいんです! だからお願いしましたよ!!」

 

「かしこまりました」

 

 

 ユンホさんまだ帰ってないけど、大丈夫かしら・・・

 

 チャンミンさんより、早く帰ってきてもらわないと・・・

 

 

 

 ユンホは、テオの弟ソンギュンに会うために、静かなカフェに来ていた。

 

「ユンホさん、まだソンギュンに会ってたんですか?」  内田ではない、別のスタッフ有田が言った。

 

「いや、久しぶりに連絡があって、今日本にいるから会えませんか?って言われたんだ」

 

ユンホは、会いたくない相手に会わなければいけない、憂鬱そうな表情でそう言った。

 

有田が、「またどうせろくでもない話なんですから、ユンホさん信用しちゃダメですよ!」 と言った。

 

 

 

 約束の時間より随分遅れて、カフェの入り口から声をかけたのは

 

「ユンホさ〜ん、お久しぶりでーす」  見るからに軽薄そうな若者だった。

 

「ソンギュン!元気だったかい?」 ユンホは、相変わらずだな。と思いながらソンギュンと握手した。

 

「どうしたんだい?どうして、日本にいるの?」

 

「いや〜友達が商売始めるから、手伝わないか?って言うもんでね」

 

またか・・・  ソンギュンの言葉にユンホはうんざりした顔をした。

 

「でね、ユンホさんにちょっとお金を貸して頂きたくて」

 

横で一緒に聞いていた有田が立ち上がって、怒鳴った。

 

「おまえ!!貸してくれ!貸してくれ!ってユンホさんに返した事、あんのか?これで、何回目だよ!」

 

「いや〜〜〜姉さんは可哀想だったなぁ〜」   有田の言葉を無視して、ソンギュンは言った。

 

「母さんもあれから、寝込んだままだし。父さんは仕事首になるし、俺の人生も狂っちまったなぁ〜」

 

 

 

 

 

聞きたくない台詞を遮るように

 

「わかったよ。ソンギュン いくらいるの?」  ユンホは聞いた。

 

「とりあえず、100万で」   ソンギュンはニヤリと笑いながら、口座の書かれた紙を渡した。

 

「ユンホさん!ダメですよ。こいつ絶対に、返す気なんかないんですから!

 

前のだって、返してもらってないんでしょ!?」     有田が怒りながら叫んだ。

 

「有田さん…いいんです。 テオの事は、全部僕の責任なんですから……」

 

ユンホはそう言って立ち上がり、ソンギュンから紙を受け取った。

 

ソンギュンは、店を出て行くユンホに向かって、

 

「仕事うまくいったら、返しますから〜〜」  と高笑いしながら言った。

 

 

 

 

 

 店を出たユンホの携帯が鳴った。

 

うわ!チャンミンだ!やばい。もう帰ってきたのか?

 

「もしもし、チャンミン?あ〜今帰るところだから。

 

 

うん、買い物だよ。買い物。 じゃあ、帰るから」

 

 チャンミンの言葉を全部聞く前に、ユンホは電話を切った。

 

「有田さん…すみませんが、どこかでパンツ買って来てもらえませんか?」

 

「え?…あ、はい、了解しました」

 

 ユンホの突然の言葉に、何かを感じ取った有田は、車をUターンさせた。

 

一番近くにあった、伊勢丹の下着売り場で、とりあえず何でもいいか…

 

適当にパンツを選んでいた有田の携帯が鳴った。

 

 

 

 

 

「はい、あ、チャンミンさん??はい、今ちょっと買い物に。

 

え?いや…それは…僕からは言えませんよ。ユンホさんに聞いてくださいよ!

 

え??え??スタイリストのゆみちゃん? 紹介してくれるんですか?

 

ほんとですか?チャンミンさん!ヤッタ―!!!

 

 

 

 ええ、そうです。はい…チャンミンさんの言うとおりです。

 

テオさんの弟ソンギュンです。

 

又、お金貸してましたよ。

 

えーたぶん、前のも返してもらってませんよ。

 

チャンミンさん・・事務所に言ったほうがいいですかね〜?

 

はい、そうですね。そうします。

 

じゃぁチャンミンさん、ゆみちゃんの件、お願いしますよー。

 

はい、じゃぁ 失礼しま〜〜〜す」

 

 業界人特有の軽い調子で有田は電話を切った。

 

 

 

 

 

 しのぶが待つマンション

 

 

 

ガチャガチャ  玄関の鍵を開ける音が聞こえた。

 

 

 

 

 

キャ〜どっち?どっち?どっちが帰ってらしたの??しのぶはユンホでありますようにと祈りながら見た。

「おかえりなさいませ。お疲れ様でした。 チャンミンさん」  どうしよう。としのぶは思った。

 

 

 

 

 

「ただいま…」    チャンミンは少し機嫌の悪い様子でしのぶに答えた。

 

 

「ヒョン―ただいま!」  チャンミンはユンホの部屋のドアを勢い良く開けた。

 

「しのぶさん!ヒョンは!?

 

 

しのぶはあわててエプロンで顔を隠した。

 

え―今日は、ゆっくり家で休んでられましたよ…

 

何言ってんの!!! いないじゃないか!!!

 

…あ…怒った。 やばい、どうしよう…

 

 

 

やっぱり、嘘だったんだ。 ヒョン、どこ行ったんだよ。

 

「ちゃんと病気治ってたの!_?  どうなの!?しのぶさん!」

 

「すみません…お熱は下がっていましたが」

 

チャンミンは、しのぶの言葉も聞かずに、すぐさま携帯を取った。

 

「あ、もしもし ヒョン? 今どこだよ!?

 

買い物?嘘つくな!嘘だってちゃんと分かってるんだからね!

 

帰るとこ?…分かった…帰ってから話そう…」

 

気まずい雰囲気が部屋の中を漂っている。

 

 

 

…そうだわ、こんな時になんだけど…思い出したわ。

 

「内田さん!ちょっと……ネクタイが緩んでますよ」……ギュー

 

今のうちに絞めておかなきゃね!と思い出し、しのぶは内田のネクタイを直す振りをして、きつく絞めた。

 

「く、く・る・し・い……しのぶさんごめんなさい…もうしません。  許してください」

 

「わかればよろしい」

 

 

 

 

「チャンミンさん、お風呂沸いてますよ。 いかがですか?」

 

「いい・・・部屋にいるから、ヒョンが帰ってきたら呼んでください!」

 

バーン!! チャンミンは凄い勢いでドアを閉めた。

 

「かしこまりました」…かなり怖いわ…

 

 

 

 

「ただいま〜〜〜」

 

 

明らかに、わざと陽気に大きな声で、ユンホが帰ってきた。

 

「ヒョン!正直に言いなよ!! どこ行ってたの?」

 

チャンミンが、部屋から飛び出て来て言った。

 

「買い物だよ、チャンミン…買い物行ってたんだよ。

 

チャンミンと同じ柄のパンツばっかりだと、しのぶさん困るだろ

 

ハッハッハッハ…ね―しのぶさん」

 

「え?ええ…まぁそれは…」

 

 

 

 ドシッ   「何で嘘つくんだ!」

 

チャンミンがユンホにつかみかかった。

 

「キャーチャンミンさん!落ち着いて」

 

「ちゃんと分かってるんだ! またあいつだろ?テオさんの弟だろ!

 

有田さんに今、電話して聞いたんだから」

 

「聞いたのか…じゃぁ、もういいじゃないか…」

 

「そういう問題じゃないだろ!テオさんは気の毒だったけど、でもあれはヒョンのせいなんかじゃなくて!

 

「いや、俺の責任なんだ」  

 

「責任、責任って、いつまで責任とるつもりなんだよ。

 

だいたい、そんな事してたって、あいつの為にならない事くらい、ヒョンにだって、わかるだろ!!!」

 

 

 

 

「うるさい!!!」

 

 

 今度はユンホがチャンミンを掴んだ。

 

「お前に何がわかるんだ!」

 

 二人は取っ組み合いになった。

 

「やめてください!ユンホさん!チャンミンさん!」

 

 チャンミンの腕を掴んだしのぶを

 

「離せ!!!」

 

 

 

 振りほどこうとした腕が、ふき飛ばした。

 

 その拍子で机にぶつかったしのぶは

 

 

 

 

 

「止めてーーーパパ!!ママを叩かないで!!!!   ママーママー大丈夫ー」

 

遠くから、たくやの声が聞こえた。

 

たくや…泣かないで…ママ大丈夫だから……

 

 そのまましのぶは気を失った。

 

 

 

 

 

「しのぶさん!しのぶさん!!どうしたの!?大丈夫?

 

ヒョン!どうしよう!!しのぶさん!」

 

 

 

 

 

 

「しのぶさん…」

 

 

 ユンホも内心とても慌てていたが

 

それ以上にチャンミンが動揺していたので、深呼吸して…

 

「チャンミン…落ち着いて。

 

とりあえず、ソファーに寝かせよう…」

 

「頭でも打ったのかな?ごめんよ。しのぶさん…僕が強く当たってしまったから…」

 

 

 

 

 

「頭は打ってなかったですよ〜。

 

僕後ろから見てましたけど…机に身体が当たって、何か叫んでバタっと」

 

 何やら、口をモグモグと動かしながら内田は言った。

 

「内田さん!何冷静に見てたんですか?

 

どうして、助けてあげなかったんですか?」

 

「いや、気持ちは十分にあったんですけどね…身体が全く反応しませんでした。申し訳ありません。

 

大丈夫だと思いますよ〜。先にご飯食べておきます??

 

 

 

 

 

「内田さん!!!!!」

 

 

 二人は同時に怒鳴った。

 

 

 

 

 

…たくや、たくや、大丈夫よ。ママ大丈夫だから。

 

もう泣かないで。ね、お願い泣かないで…

 

 

 

 

 

しのぶさん…しのぶさん…しのぶさん…しのぶさん…

 

 

 

 

 

遠くから声が聞こえる…

 

たくや…………違う声……

 

 

 

 

 

しのぶさん、ごめんよ。もう喧嘩しないから、心配しなくていいから…

 

泣かないで。

 

 

頬を伝う涙をぬぐう指先が震えている。

 

誰?   しのぶのうっすらと開いた目に見えたのは、心配そうに覗き込む

 

 

 

……チャンミンさん……

 

 

 

 

 

「しのぶさん!気がついたの?大丈夫ですか?

 

ごめんなさい。…すみませんでした…ついむきになって、しのぶさんにまであたってしまって」

 

「私・・どうしたのかしら?  倒れちゃいました?

 

チャンミンさん、大丈夫です。気になさらないで。

 

お腹空いていたんです。だから貧血よ。大丈夫ですから」  しのぶは起き上がって、そう言った。

 

「それより、チャンミンさん。

 

ユンホさんが嘘をついたのは、チャンミンさんに心配かけてはいけないからって…」

 

 そう言いかけた、しのぶの言葉を

 

 

 

「もういいから、しのぶさん。今はもうその話よそう」   ユンホが遮った。

 

 

 

 

 

「でもユンホさん…」

 

 

 

 

 

 

「いいから、ご飯食べよ…………あれ?内田さんは?」  3人は部屋の中にいない、内田に気づいて、

 

キッチンへ行った。

 

 

 

やっぱり…

 

 

 

 

 

 

「早く皆さんも食べましょうよ〜〜、この海鮮チヂミ最高ですよ!」

 

 

 

 

 

 一人テーブルに座り、美味しそうに頬張る内田の姿があった。