(ユンホとオモニ)
 ユンホさん大丈夫かしら…40度近い熱あったのに、しゃんとして出かけて。
本物のスペシャルユンケルとサムゲタンのスープを内田さんに持って行ってもらったけど、
ちゃんと飲めたかしら…チャンミンさんも凄く心配そうな顔してたわ。酷くならなきゃいいんだけど。
 内田さんが病院に行って点滴打って貰うって言ってたから、大丈夫よね!
 今日の歌番組って、何だったかしら…なんていってたかな…やっぱり、見るのはやめておこう。
 しのぶは家事をしながらも、ユンホの事が気になって仕方がなかった。
 ユンホさんの部屋は片付けていいのやら、悪いのやら、元気になったら、ちゃんと確認しておかないと。
どれがいるもので要らない物なのか、さっぱりわからないもの。
掃除機をかけながら、散らかったユンホの部屋で途方にくれた。
心配を違う事で誤魔化そうと、色々考えている間に時間は過ぎた。
ピンポーン ガチャガチャ ドンドン  玄関を叩く音が聞こえた。
「はーい、今開けます」…どうしたのかしら?内田さん鍵無くしたのかしら?
スタッフに、抱きかかえられたユンホがいた。
「ユンホさん!ユンホさん!大丈夫ですか?ユンホさん!ユンホさん!」
動揺したしのぶは、泣きそうな表情で叫んだ。
「あの…新しいお手伝いさん。そんなに心配しなくても、風邪だから大丈夫ですよ。
ただ、喉が腫れていて熱が高いので、病院にも行って、ちゃんと薬も貰ってありますから」
「そうなんですか…良かった」 しのぶは半分泣きながら言った。
「すみません、ちょっと思い出して、動揺してしまいました」
「しのぶさん、大丈夫。寝れば治るから、泣かないで」
「ユンホさんごめんなさい。ちょっとびっくりして…スタッフさん、こちらです。こちらに寝かせてあげてください
ユンホさん自分でパジャマに着替えられますか?」
「大丈夫」
今、氷枕用意しますから。
「じゃぁお手伝いさん!後は看病よろしくお願いします」
「はい、かしこまりました。…あのところで、チャンミンさんと内田さんは?」
「あ―なんだか、生放送の後にタモリさんに誘われて、ラーメン食べに行かれました」
「そうですか、じゃあ、心配いりませんね。 お疲れ様でした」
「ユンホさん、ほんとに大丈夫ですか?熱計ってみましょう。はい、氷枕です。おでこにもタオル
のせましょうね。寒気はしませんか?お薬は何時に飲んだんですか?」
「うん、もう寒くない。 でも、本番の時に凄く寒くて、マイク持つ手がブルブル震えちゃったんだ。
薬は…内田さんが食べてたサムゲタンを少し貰ってから飲んだから…7時くらいかな」
ユンホさん…敬語じゃないのね。…熱があるからなのか…それとも安心したからなのかしら。
「それは大変でしたね。お可哀想に」
え?内田さんが食べてたサムゲタン?しのぶはその言葉に、少し遅れて反応した。
あのデブ  一度絞めてやる…
しのぶは心の中で内田の首を絞める姿を想像した。
「ユンホさん、まだ39度もありますよ。水分摂って、ゆっくり寝てくださいね」
 お薬効いてないのかしら?
「ドア開けておきますから、何かあったらすぐに呼んでくださいね」
しのぶは、苦しそうに寝ているユンホに、そっと声をかけて、部屋を出た。
しのぶさん
しのぶさん
しのぶさん  喉渇いた
自分の部屋にいるしのぶに、小さくユンホの声が聞こえた。
「ユンホさん、ごめんなさい。ここよ。ここに置いたの言わなくて。はい、大丈夫ですか?
飲めますか?横向いて飲んでくださいね。ユンホさん、私ここに居てもいいですか?向こうだとユンホさんの
声が聞こえないわ」 覗きこんで、しのぶは尋ねた。
うん…
子供のようにユンホは頷いた。
「気にしないで、ゆっくり寝てくださいね。襲ったりしませんからね」 しのぶは少し笑いながら言った。
「フフフ、 おもしろいね。しのぶさん」
玄関の開く音がして、慌しくチャンミンが部屋に入ってきた。
「ヒョン!大丈夫?」
「あ、チャンミンさん、おかえりなさいませ。今やっと寝付かれた所です。どうでしたか?タモリさんと行かれた
ラーメン屋さんは」
「えーっと、あなた名前何でしたっけ?」   ニヤ いたずらっこのような顔で、チャンミンは言った。
「また、そこからですか?チャンミンさん…しのぶです!」
「フッフッフ冗談ですよ。しのぶさん。美味しかったですよ、でもヒョンの事が気になって…」
「そうですよね。…でもタモリさんのお誘いも断れませんものね。  ところで、内田さんは?」
「なんか…バレたらやばい…とか何とかつぶやいて、さっさと帰って行きましたよ」
やっぱりね…と思いながら
「チャンミンさんは内田さんからサムゲタン貰いましたか?」と、しのぶは聞いた。
「そうだよ!しのぶさん、僕らにはどうしてサムゲタンなかったんですか??
内田さんが昨日食べれなかったから、しのぶさんが僕にくれた!って一人で食べてましたよ。
僕らが局のお弁当で、マネージャーさんがサムゲタンって…あ、ユンケルは貰いましたけど」
……内田さん……お二人の分を…一人で…
一生汗かいてろ!!!   今度来たら、絶対に首を絞めよう、としのぶは思った。       
「すみませんでした。チャンミンさん。連絡不足でした。まだ、少し残ってますが召し上がりますか?」
「そうですね。食べてもいいかもしれませんね!!!」
さすがチャンミンさん。ラーメン食べて…まだサムゲタン…
「私はユンホさんの部屋にいますので、何かあったら、呼んで下さいね」
「え〜〜〜しのぶさん、ヒョンの部屋で寝るんですか―?
襲うつもりですか??ヒョンが弱ってるからって?
活きのいいの見るの、久しぶりとか何とかって言ってましたよね。
活きのいいのって、魚とかがピチピチして元気なってことでしょ?
今日スタッフに聞いてみたんですよぅ!」
「チャンミンさん!ユンホさんが高熱で唸ってらっしゃるのに、何言ってるんですか!?
襲いもしませんし、寝ませんよ。側で看病するんです!
襲うのは元気になられてからにします!」
「冗談ですよ、分かってますよそれくらい。  って元気になってからも、襲っちゃダメじゃないですか。
変な家政婦さんですね」 チャンミンは呆れたようだが、少し笑っていた。
「さぁチャンミンさんも早く食べて、ぐっすり寝てください。 明日は何時ですか?」
「ヒョンは休み。僕は撮影で5時」
「あ―ユンホさん、お休みで良かったです。 チャンミンさんは5時ですね。起きれますか?もうあと何時間
しかありませんよ」
「それは僕の知るところではありませんね」 
「フフフ…何言ってるんですか…ちゃんと起きてくださいよ!」
「ではおやすみなさいませ」  しのぶはお辞儀して、ユンホの部屋に行こうとした。
「うん、ヒョンを頼みましたよ」 
「あ、そうだ。忘れてました。これ、しのぶさんの携帯です。ヒョンと内田さんと事務所の番号が入ってます
から。しのぶさん、絶対に誰にも教えないで下さいよ。裏切りはもうこりごりですからね」
 チャンミンはそう言って、しのぶを睨んだ。
「はい、わかりました。ありがとうございます」
(ヒョンと内田さんと事務所…チャンミンさんのはないのね.)
「絶対に誰にも言いません」
裏切りは…って誰かに裏切られたのかしら?前のお手伝いさんかしら?
 ユンホさん、氷枕変えましょうね。
まぁ汗びっしょりだわ。 少し熱下がってきたのかしら。
 ユンホさん着替えましょうね。汗拭きますよ。
しのぶは寝ているユンホの服を着替えさせて、身体を拭いた。
 う〜〜〜ん。 …テオ…   うなされたユンホは、小さな声で言った。
 テオ…誰かしら?スタッフ?お母さん?イヤイヤ、どう考えても彼女よね。ユンホさんもいるのね。
あら、手出してるわ…どうしましょ?まるでドラマのワンシーンのような…
代わりに私、手握っていいのかしら?しわくちゃムチムチで、きっとテオさんの綺麗なお手手とは随分と
違うだろうけど。
しのぶは、恐る恐るそーっとユンホの手を握った。
その瞬間、
「ママ…ママ…喉が痛いよ…息が出来ない…苦しいよ…」
幼い息子の声が聞こえた。
「たくや!!」
自分の大きな声にハッと我に返ったしのぶは、ビックリした顔で、こっちを見るユンホを目があった。
「どうしたの?僕たくやじゃないよ。しのぶさん 又泣いてるの?」
「あ、ごめんなさい。ユンホさん、起こしてしまって」
流れる涙を拭いながら、しのぶは言った。
「ユンホさん、ごめんなさい。どうですか?汗随分かいたから、少しは熱下がったんじゃないですか?
もう一度計ってみましょうね」
「しのぶさん…大丈夫なの?帰ってきた時も、何か様子おかしかったし、また泣いてるし、たくやって誰?
ユンホさん…ごめんさない。寝ぼけて木村たくやさんの夢をみてました。
「きむらたくや??言いたくないんですね、わかりました」
「ユンホさん良かった!37度台に下がってますよ。やっとお薬が効いてきましたね」
「しのぶさんのおかげです。ありがとうございます」 ニコッ
残念。また敬語に戻っちゃった……この笑顔最高だわ…ドキドキしちゃう
「ユンホさんお休みで良かったですね。1日ゆっくり寝てたほうがいいですよ」
「はい、でもちょっと約束があるんですよ」   少しうっとおしそうに、ユンホは言った。
テオさんかしら…その割りに憂鬱そうな顔だけど…
「わかりました。それまでもう少し、寝ててくださいね」
「そうですね。 そうします。 ありがとう。しのぶさん」
ジリリリリリ
チャンミンさん、絶対に今日はすぐに起きないだろうな・・・・
さっき寝たばかりだもの・・・・
チャンミンさん!起きてください!キスしますよ――!!
シ―――ン   やっぱりダメだ。
1日しか効果なしか…手強い。
仕方ない……
耳元で「チャンミンさん……活きの良いの見てもいいですか〜?」
「やめろ―――!!!」   チャンミンは飛び起きて、部屋を慌てて出た。
成功! しのぶは笑って、ピースサインをした。
まったく……こんな家政婦さんは始めてですよぅ!!
「しのぶさん、ヒョンはどうですか?」
「はい、やっと37度台に下がりました。でも今日お出かけのようですよ」
「え?どこへ?」
「さぁーそこまではお聞きしていませんが」(テオさんかと…)
どこ行くんだろ?聞いてないけど。ヒョン
「しのぶさん、ヒョンまだ寝てる?」
「はい、たぶん」
ちくしょーもう行かなきゃならないし。チャンミンはユンホの事が気になり、時間がない事に苛立った。
どうしたのかしら…急に機嫌悪くなったわ…  しのぶはチャンミンの様子を伺った。
後で電話するか…
「行ってきます」    気の無い様子でそう言うと、チャンミンは出て行った。
「はい、チャンミンさん、いってらっしゃいませ。お気をつけて」
いったいどうしちゃったのかしら…チャンミンさん…