(過去)

 

 

 

 

 

 少し前まで病人で溢れていた待合室も、今は誰もいなくなり、TVの画面だけがチカチカと光ってい

 

た。

 

 

 

 

 ヒックヒック  しずかの泣きじゃくる声がとまりそうになっては、また、わぁ―っと泣き出す。

 

そして、横ではしのぶが呆然とじっと前だけを見ていた。

 

人の事では涙もろいしのぶだが、案外自分の事だと、涙は出ないものなのね。と、冷静に考えたりし

 

た。

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。しずかさん、まだ知り合ったばかりのあなたにこんな事お願いして。

 

内田さんは素直な方だから、きっとすぐにバレてしまうと思うのよ。

 

その点しずかさんは看護師をしてらしたから、すごくしっかりしているし…

 

私ね、あなたに会って、すぐに好きになったわ。

 

可愛くて、本当の娘のように思えて。

 

だから、今も頼りにしてしまって…ほんとうにごめんなさい」

 

「しのぶさん、…私もです。私もすぐに好きになりました。

 

私もたっちゃんと一緒で、小さい頃にお母さん亡くしてるから、しのぶさんの事、ほんとのお母さんの

 

ように思って…。

 

 出会ってからお料理教えてもらったり、一緒に買い物に行ったり、家事のいろんな事教えて貰って

 

凄く楽しかったし、嬉しかったです。

 

 お母さんがいたら、こんな感じなのかなぁーって思って…。

 

だから、しのぶさん諦めないで、頑張ってください。

 

お願いですから、すぐに入院して、治療してください」

 

「それは無理よ。今お二人はツアー始まって、忙しくて…こんな時に私が入院なんかしたら…

 

うぬぼれかもしれないけど、お二人はとても私の事心配して下さっていて…

 

自分たちが疲れているのに、顔色悪いよとか、痩せたんじゃない?とか気にかけてくださって」

 

「うぬぼれなんかじゃありません!!!

 

お二人はほんとにしのぶさんの事を心配なさっています。見ていてわかります」

 

「だからね。だからお願い。 

 

 

どうか、内田さんにもお二人にもこの事は黙ってて。通院で頑張ってみるから。それにね、もう私十分

 

よ。こんなに幸せもらったんだから。罰ばかりじゃなかったのよ。

 

 

たとえ、このまま死んでしまっても、笑って逝けると思うのよ」

 

「嫌です !! しのぶさん!!そんな事言わないで下さい!!」

 

二人は抱き合って、いつまでも泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

 

 

「おかえりなさいませ。ユンホさんチャンミンさん」

 

「あ―お腹空いた――。良い香り…今日はカレーだね」

 

 

 

「ええ、今日はたまねぎをいっぱい使って作りましたから、美味しいですよー」

 

「だから、二人共目が真っ赤なんですね」

 

「そうなんですよ!ユンホさん。今日はイチゴもちゃんと買っておきましたよ」

 

「わぁーありがとう!しのぶさん!♪イチゴ〜イチゴ〜イチゴが食べれる〜〜♪」

 

 

 チャンミンはしのぶの体調が悪くなってからは、ずっとこの家にいるしずかと、

 

必ず一緒にご飯を食べてから帰る内田の、2人の目を気にしながらも、しのぶにまとわりついた。

 

後ろから腰に手を回し、しのぶの肩越しにピッタリと顔を寄せ、しのぶの混ぜるカレーを見ていた。

 

「チャンミンさん、どうしたんですか? また、嫌な事あったんですか?

 

フフフ…チャンミンさん、そんなに甘えん坊でしたっけ??韓国のオモニは大変ですね」

 

たくやも  ママ、ママ、ご飯まだ? ってよく足元にまとわりついてたわ…

 

それにしても、クールでカリスマチャンミンさんの素顔がこんな甘えん坊だなんて、皆さんが知ったら

 

フフッ 余計に喜ぶかもね。

 

 

 

 

 

 

 チャンミンさんたら、最初は私たちの目を気にしてたのに、今はすっかり無視して、まぁイチャイチャ

 

と、そんなにひっつかなくても、カレーは見えるでしょーが!!

 

たっちゃんなんか、全然寄ってもこないのに……

 

「あの…ユンホさん…韓国では本当にお母さんにあんなにイチャイチャするんですか?」

 

「するわけないじゃないですか!!!日本よりはスキンシップ多いですけどね。

 

ほら、見て。 チャンミンはもうキスしそうな勢いですよ。アッハッハッハ

 

チャンミン、どこまで我慢できるか、楽しみだなぁ〜。

 

きっとしのぶさんが逃げちゃうから、永遠に我慢ですね!」

 

「ええ?ユンホさん、そんな事言っていいんですか? 

やっぱり、そうなんですか? あのクールなチャンミンさんが?」

 

 

 

 

「しずかさん!内緒!内緒!幸せそうだから、いいじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 確かにすごく幸せそう……二人共楽しそうにニコニコ笑って。

 

 しのぶさん絶対に治ってください…………

 

 

 

 

 

 

「しのぶさん、病院行った?」

 

 

内田夫妻が帰ると余計にしのぶから離れず ピッタリとくっついたまま、チャンミンは聞いた。

 

「ええ、 お薬貰って、通院しないといけないみたいなんですけど…

 

大丈夫です!ちゃんと診てもらっていれば、そのうち治りますよ」

 

 チャンミンは少し不安は感じたものの、そんなに酷い病気だとは全く疑いもせずに、しのぶの言葉を

 

信じた。

 

 しのぶも、医者はああ言ったものの、ほんとは治るかもしれないし、と少しの希望を持ってチャンミン

 

を見た。

 

 

 

 

 

 

 東方神起ツアーが始まり、忙しい毎日ではあったが、しのぶの病状以外は皆充実した日々を送って

 

いた。 韓国での仕事が終わり、久しぶりに日本に来た二人、皆が寝静まったある夜。

 

 

 

 

 

 

 あら?ユンホさん……こんな遅くにどうしたのかしら? 喉が渇いたしのぶはキッチンからユンホを

 

見つけた。

 

 ユンホは一人ベランダの手すりに身を乗り出し、星空を見上げていた。

 

「ユンホさん?どうかなさいましたか?」

 

 ユンホは振り向きざまに流れる涙を拭いた。

 

「しのぶさん……星を見てたら、思い出しちゃって……」

 

「何をですか?」

 

 

 

「僕ずっと好きな人がいるんです」

 

 

「テオさんですか?」

 

 

 

「え?なぜ知ってるの?」

 

 

「熱でうなされていた時に何度も何度も呼んでいらしたから…」

 

「そうですか…そうです。テオです。彼女とはデビュー前からの恋人で…

 

僕がデビューした頃にマスコミに見つかって、追い掛け回されて、僕のファンからは酷い事を言われて

 

守ってやりたかったのに……忙しくて会えなくて……

 

あの一番光ってるあの星を見て頑張ろう!って言ってたのに……

 

繊細だった彼女は耐え切れなくて………………

 

自ら海に入って死んでしまったんです。   僕のせいなんです。

 

僕が彼女を殺してしまったんです」

 

 ユンホは肩を震わせ、声を押し殺して泣いた。

 

可哀想なユンホさん…………しのぶは思わずユンホを抱きしめた。

 

可哀想に……可哀想に……可哀想なユンホさん……しのぶも一緒に泣いた。

 

 

 

 

 

 

 その二人の姿をチャンミンは部屋の中から見ていた。

 

しのぶさんは誰にでも優しいんだ。

 

やっぱり僕だけにじゃないんだ……二人のオモニなんだな……。

 

 チャンミンの胸は張り裂けそうだった。

 

最強チャンミン!!あ―情けない! まったく、あんなおばさん1人落とせないなんて!

 

 

 

 

 

 

 チャンミンは、コンサートが終わると、飛ぶように帰ってきては、しのぶにまとわりついた。

 

 

 

 

 

 

 じっと見つめている、チャンミンの視線を感じてはいたが、しのぶはチャンミンの方を見るのが

 

怖かった。

 

 ダメよ!見ちゃダメ!チャンミンさんの大きな瞳見てしまったら、このまま吸い込まれそうで、

 

このまま年甲斐もなく、しなだれかかってしまう。家政婦の分際で!!

 

 わたしはオモニよ!オモニの代わり!そうよ!オモニの代わりなんだから!

 

 しのぶは必死で自分に言い聞かせた。

 

 しかし、そう思いながらも、ピッタリと寄り添ってくるチャンミンから、離れる事も逃げる事も出来なかった。

 

た。

 

 

 

 

「チャンミンさん…あの…韓国の彼女はどうなさったんですか?

 

ハート柄のパジャマお揃いじゃないんですか?ラブラブですね〜」

 

 話題を変えようと、しのぶは言った。

 

「彼女ですか?もう別れました。 全然会ってなかったし、向こうからの連絡もなくなって…

 

自然消滅ってやつですかね…パジャマは変えるのが面倒だから、着てるだけです」

 

 チャンミンは何事もなかったかのように、冷静に答えた。

 

「冷めてますね。好きじゃなかったんですか?」

 

「最初はちゃんと好きでしたよ。…好きだったかな?まぁいいか…ぐらいだったかも。

 

僕自慢じゃないけど、モテるんです」

 

「チャンミンさん、それ完璧自慢ですよね。  フフフ」

 

「まぁそうとも言います。なんかあまり、真剣に恋した事がなかったんです。今まで…」

 

 

 

「お若いんですから、これからいっぱい良い恋出来ますよ」

 

「僕は今ドキドキしていますよ」

 

 

 チャンミンは片方の腕で、しのぶの肩を強く抱き寄せた。

 

 あ―お願いです、止めて下さい、チャンミンさん。 しのぶは心の中で思った。

 

 

 チャンミンは、しのぶの、落ち着き無く動く視線の中に入るように覗き込み、大きな瞳でじっと、しの

 

ぶを見つめた。

 

 そして、ゆっくりと、ほとんど唇が触れるくらいの距離で、キスしてもいい?と甘く囁いた。

 

 とろけるような感覚が、しのぶの身体を走った。

 

 うっとりと目を閉じかけた…が、ハッと我に返ったしのぶは、チャンミンを押し飛ばし、飛び上がった。

 

 

 

 

「ハァハァハァ・・チャンミンさん!何するんですか!

 

おばさんからかうのは止めて下さい。さすがにモテる男は違いますね。

 

もうちょっとで、目つむるところでしたよ。オモニにキスはしないでしょ!!」

 

ドキドキしながら、必死でしのぶは叫んだ。

 

 

 

 

「惜しい!もうちょっとだったのに!!」  チャンミンは下を向いてつぶやいた。

 

立ち上がってニヤリと笑い、「それが韓国ではするんですよ〜〜〜」

 

フッフッフとしのぶを追いかけ、後ろから抱きしめ、頬に何度もキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

「キャ―やめてくださ――い。チャンミンさん、やめて〜〜キャハハハ くすぐった―い」

 

「フフフ…オモニ―大好きですよ―オモニ―」

 

 

 

 

 

 

二人の楽しげな笑い声が部屋中に響いた。

 

 

 

 

 

 

ユンホは自室でその声を聞き、

 

 

チャンミン…楽しそうで良かった。

 

俺も新しい恋しようかな…  ユンホはフッと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 地方でのコンサートを終えた二人と、内田夫妻としのぶ5人での、いつものように楽しい夕食時

 

 

 

「今回のステージはどうでしたか??」しのぶは二人に聞いた。

 

「今回も最高だったよ!!ヒョンのギャグにシーンとなって…ヒョンがどうしよう?どうしよう?って顔に

 

 

なって、それが一番おもしろかった」言いながら、チャンミンはお腹を抱えて笑っている。

 

「しのぶさん聞いてくださいよ〜。チャンミンはいつも無視するんですよ!シーンとなっても、知らん顔

 

 

するんですよ。全然助けてくれないんですよ―」ユンホは情けなさそうな顔で言った。

 

「自己責任ですからね!!」チャンミンはそう言って、また笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ…楽しそうですね〜。早く観たいです。8月ですよね?私の誕生月です」

 

 

「え?私も8月ですよ。一緒ですね〜」しずかが言った。

 

「へぇ―僕らは偶然にもみんな2月ですよ。ねぇ―内田さんも2月なんですよね」

 

「まぁ3人とも? 面白い偶然ですね」

 

「ほんとですね。おまけに内田さんと僕は日にちまで一緒なんです」ユンホが内田の顔を見ながら言

 

った。 「へぇ―何日ですか?」

 

 

 

26日です」

 

 

 

26日??内田さん26日生まれなんですか?  内田さん何歳でしたっけ?」

 

「たっちゃんは29歳です」

 

 

 

 

 

 

 

たくやと同じ…………そんな、でも内田さんは……………内田さんで

 

名前と生年月日が同じなだけよ……そんな事あるわけないわ……

 

 

 

 

 

 

「しのぶさん、急に黙ってどうしたの?顔色も悪いよ?」チャンミンは心配そうに、顔を覗き込んだ。

 

「いえ……何でもありません。コンサート楽しみです。

 

 

私、皆さんの声援にちゃんとついていけるかしら?」

 

「アッハッハッハ、そんな心配しなくても、黙ってみてるだけで大丈夫ですよ」ユンホが笑いながら言っ

 

た。

 

 

 

「ほんとですか?ユンホさん」

 

 

 

 皆が楽しく笑った。

 

 

 

 しかし、しずかだけは心の底から笑えなかった。  しのぶさん8月まで…

 

 

 

 

 

 

 シャワーを浴びて出てきたチャンミンは、うっすらと見える人影をみつけた。

 

「しのぶさん…どうしたの? こんな所で座って…」

 

 しのぶはベランダに椅子を持って来て座っていた。

 

「寝れないの?」

 

 

 

「チャンミンさんこそ又明日早いのに、寝なきゃ…体力持ちませんよ…」

 

「うん、でも…ちょっとだけ一緒にいていい?」

 

「もちろんです」

 

 

 チャンミンも椅子を持って来て、しのぶの横に座った。

 

 ぐったりと座っているしのぶは、チャンミンにそっと手を差し出した。

 

 チャンミンは驚いて、その手を握りしめた。

 

「はじめてだね。 しのぶさんから手出してくれるなんて…いつもは僕が無理やり手握ってたのに」

 

しのぶはフフフ…と力なく笑い、小さな声で 「ダメですか?」と聞いた。

 

「ダメなんかじゃないよ!嬉しいから言ってるんだよ」

 

 

 

 

 

 

「私ね、今思い出してたんです。昔の事」

 

「昔?しのぶさんが嫌がって、絶対に教えてくれなかった事、話してくれるの?」

 

「私20歳で結婚したんです。医者だった両親のすすめで、そんなに好きでもなかったお医者様と。

 

すぐにたくやが産まれて…その時は幸せでした。しばらくは。

 

でも、その内主人の暴力、浮気が始まって、家の中では姑がたくやを取り上げて…

 

私の居場所はどこにもなかったんです。 そんな時、家に出入りしていた人と恋に落ちて…

 

私はたくやをおいて、家を出ました。 たくやを捨ててしまったんです…。

 

そして、その後すぐに、その彼も事故で死んでしまいました。

 

それから、ずっと私は一人で生きてきたんです。 ずっとたくやの泣き声に怯えながら。

 

…………チャンミンさん、軽蔑したでしょ?私は息子を捨てたひどい母親なんです。

 

ほんとはあなたのオモニだなんて、言える立場じゃないんです……」

 

 

 

 

 

 

「……しのぶさん、仕方なかったんだよ……大丈夫……もう大丈夫だから……」

 

チャンミンは泣いているしのぶの髪をなでた。優しく何回も何回も。

 

「ありがとう…チャンミンさん…」しのぶはチャンミンの肩によりかかり、泣きながら眠ってしまった。

 

 チャンミンはしのぶをベッドに連れて行こうと抱きかかえ、持ち上げた…

 

あまりの軽さに驚いた。

 

 

いつの間に、こんなに痩せちゃったんだろ?

 

しのぶさん、ほんとに大丈夫なんだろうか……

 

 

 

 

 

 

翌日移動中の車の中で

 

 

 

「ねぇ、ヒョン……、しのぶさんの事なんだけどね……」

 

 

 

「うん?チャンミン、しのぶさんがその気になってくれないって??

 

それは僕に言われても知らないね〜〜〜〜〜アッハッハッハ」

 

「違うよ!凄く痩せただろ?」

 

 

 

 

「あ―それ僕も思った。顔色もずっと悪いよね」真剣な表情に変わったユンホは言った

 

「昨日薬見たんだ。…凄くいっぱい飲んでるんだよ。

 

あんまり一杯あって、調べるの忘れちゃったけど…

 

ほんとにただの貧血なのかな……」

 

 

「内田さん、しずかさんから何か聞いてない??」チャンミンは運転席に乗り出して、内田に聞いた。

 

おにぎりを口に一杯詰め込んで、内田は

 

「聞いてないですけど、しずかは朝からずっと、しのぶさんのそばにいるみたいです。

 

僕もちょっと気になって、聞いてみたんですけど、しずかは大丈夫!って言うだけだし」

 

「内田さんも気になったの?いいとこあるじゃん!」ユンホは見直したと言うような表情で言った。

 

「そりゃー僕だって、人並みに心配しているんですよ。食べてばっかりじゃないんですよ!」

 

と言いながら、内田はもう一つのおにぎりを頬張った。

 

 

 

 

 

 

 日増しに体力のなくなったしのぶは1日のほとんどをベッドで過ごした。

 

まだ元気だった頃に、みっちりと料理を教えたおかげで、この頃はしずかがほとんどの料理を作って

 

いた。

 

 

 

 

 しのぶのベッドの横でしずかが聞いた。

 

「ねぇ、しのぶさん…あのお二人はほんとに良い方たちですね。

 

私芸能人っていうと、もっとつんけんして、嫌な奴ばっかりかと思ってましたけど、ほんとにどこにでも

 

いる普通の青年って感じで。

 

1歩外に出るとオーラ凄いんですけどね〜」

 

「ほんとにね、私も最初にこのお仕事頂いた時はきっとアイドルなんて、わがままなガキんちょだろう

 

と思って、ちょっと嫌だったんだけど、お給料良くってね」

 

「キャハハハ…しのぶさんそうなんですかぁ〜 おもしろい〜〜」

 

「ねぇ―しずかさん…ちょっと聞きたい事があるんだけど、内田さんも小さい頃にお母さんが亡くなっ

 

たって、言ってたわよね??」

 

「ええ、でも、たっちゃんはたぶんお母さんは小さい時に出て行ったって。

 

そんな記憶が微かにあるって言ってました。

 

その後新しいお母さんが来て、弟が2人できて、今はお父さんの病院はその弟さんがついでらして」

 

「え???」

 

 

 

 

「だからたっちゃんは私のとこに養子になって、入ってくれたんです」

 

「お父さんの病院って??」

 

白鳥病院です。

 

 

 

そんな!!まさか……そんなはず……

 

内田さんがたくや…………そんな……

 

「それがどうかしたんですか? しのぶさん?

 

しのぶさん!大丈夫ですか??」

 

 

「ええ、ええ、大丈夫。大丈夫よ……しずかさん……」

 

 

 

 

 

 

「今度は私が質問です!!!

 

 

しのぶさんは、どちらがタイプですか???」

 

「キャ―何それ? その質問…」 たくやの事が気になりながらも、力はないが楽しそうにしのぶは

 

笑った。

 

「ガールズトークですよ!!しのぶさん。

 

だって!!あんな男前2人と、ずっとではないにしろ、一緒に暮らしてるんですよ?

 

その気にならないなんて、信じられませんよ!」

 

「ほんとにね、全世界のファンの方に申し訳ない気持ちよ」

 

「そうですよ!! それに…私チャンミンさんはしのぶさんの事好きだと思いますよ」

 

「しずかさんまで!おばさんからかわないでよ〜〜

 

そんな事あるわけないじゃないですか!!オモニの代わりですよ!

 

外で大変だから、家では甘えてるんですよ」

 

「だから!!!しのぶさんはどっちが好きなんですか?」

 

 

「お二人とも大好きです。ホンとにホンとに大好きです。

 

でもね……ウフフフ……

 

 

ガールズトークですよ。しずかさん……

 

絶対に内緒にしてね。

 

 

 

最近…チャンミンさんが甘えてくると凄く嬉しくて…

 

あの大きな瞳でじっと見つめられるとドキドキして…

 

触れられるとキュンキュンするんです」

 

「キャ―  そうよ! そうよ! しのぶさん! それが普通よ〜〜〜!!!!

 

そうでなきゃ!!そうよ〜!!!

 

 

そうでなきゃ、私しのぶさんに毒盛るとこだったわ!!!

 

あー良かった」  (チャンミンさん・・・良かったですね)

 

 

 

 

 

 

 地方のホテルでチャンミンは、紙に控えていた薬の種類をネットで調べた。

 

………………抗がん剤………………

 

「ヒョン! ヒョン!」

 

 

 

 ユンホは飛び起きた。

 

 

 

「チャンミン!どうしたの!?」

 

 

チャンミンはユンホに抱きついた。

 

 

「しのぶさん…がんなんだ…飲んでる薬調べたら抗がん剤があったんだ!

 

どうしよう! ヒョン! しのぶさん死んじゃうんだ!!!」

 

 ワッーっとチャンミンは泣き出した。

 

 ユンホはチャンミンを抱きしめながら、「まだそう決まったわけじゃないよ!!

 

ちゃんと明日しずかさんに聞いてみよう。

 

チャンミン!大丈夫だから!きっと!大丈夫だから!!」

 

 ユンホも泣いていた。