-冬景色(孤高のクリマス)- ここ何年かは雪も申し訳程度で 東京に積もるのは塵と問題ばかり 片付かない苛々は24日を迎えても つくづく 続く 億劫 クリスマス いつから楽しんでないだろう コンビニの店長という肩書に絆され 完全に社会のエキストラ 主役は毎年カップル 家族 子供達だ 消費者を喜ばすのが俺の宿命だったとは有り難い虚しさ 好んでなった姿じゃないが選んでしまった姿 人生楽しめという意味では 年に一度の貴いイベントを無駄にしてる哀れな男 今日は呑み仲間も仕事仲間も 俺には付き合ってくれない 仲間と言っても冷たいもんさ仕事を終える頃には25日の朝だ 誰も入りたがらないシフトの重みを偶には我儘なバイトにも 解らしてやりたい 胸はって仕事どころじゃないと俺も言ってみたい 私生活がもう少し充実してれば きっとレジから見渡す外の風景も もっと違っただろうに 昔 生涯を約束した 最初で最後の彼女が俺にもいた 彼女の為なら何でも出来た 人生意気に感ず そう信じて生きて来たがこの様 考えた 勘ぐった 俺には出来すぎた話しだった 名残りをずるずると引きずって10年 一途もやがて人は女々しいと軽蔑するようになる 硬派はもう古い 良識の囲いを壊したストーカーよりましってのが 俺のほんの僅かな救いと言い訳だ あの頃にはどうしたって戻れない 戦争が終わった日 争いの休日 由縁がなんだろうと同じ穴のムジナじゃないか 欲得の果て 世界を1つになんて ジョン・レノンも もう居ないのに 理想は理想で終わる 大陸や海や空を支配したがる以上は争いは収まらない どの世紀も 同じ過ちを犯すんだ 引っ掻き合い 毟り合い いがみ合う 神が俺達人間に平等だった事は1度もないじゃないか 俺達人間を安らげさせてくれた事も 神の名を借りて世界は酷くいじゃんか 神に許されれば何をしてもいいなら 俺達は感情を顧みない神の奴隷だ 神よ違うかい それとも丸腰で地味なこんな俺に雷の裁きを下すかい? もうすぐ夜明けだ 夜明けだけは誰にでも等しく来る 寄り道をするか横道に迷い込むか どちらにしても 女をひっかける勇気もなく 買う度胸もなく 声を掛けられる事もなく 暇に押し潰されて眠る 昔 刑事を目指していたんだ ドラマに魅せられ 正義と生き様に憧れ そりゃ寝る間も惜しんで目指したよ 人生意気に感ず そう信じて生きて来たがこの様 思った 解った 俺には無謀な話しだった 夢を掴む事が出来ず15年 店長もやがて人は誰にでもなれると鼻で笑うようになる 過去の栄光も無い 常識の囲いを壊した万引きよりましってのが 俺のほんの僅かな救いと傷み分けだ あの頃にはどうしたって戻れない 戻せない 同じ日はないから その日その日を大事に 誰かがそんな問い詰めるような話しを俺にした この悲愴感 暗澹さは一体どっからくんだろう 俺って一体なんなんだろう 俺って一体誰なんだろう 誰かの為に何かの為に自分を懸けてみたい 必要とされたい 現実という悪夢に魘されて 滅入って眩暈を感じる 病んでる訳じゃない バランスを旨く保てないだけだ 医者は御免だ 至って正常だ だって全ての人は何かに溺れてるもんだろ 俺は正気だ 『去年からクリスマスは二人で必ず過ごそうと約束していた  18時には仕事を切上げ 19時には待ち合わせの場所へ行く予定だった  17時53分 男が民家に侵入 人質をとり立て篭もったと間の悪い通報   男は拳銃とナイフを所持し5000万を要求している    彼女か人命か迷ってる暇はなかった 刑事は現場へ走った  いつまでたっても来ない 彼女の楽しみは胸騒ぎへと変わった  事件発生から6時間収束を迎えたが 刑事1名 警官隊1名が撃たれた  冬の夜空の寒さの中 散々待たされた彼女   二度と会えない刑事からの贈り物は雪だった…』