メルルのアトリエ アーランドの妹錬金術士
ある日の日常C




「こんにちはー」

 お姉ちゃんとともに執務室へ行くと2人が出迎えてくれた。
 ルーフェスお兄ちゃんとメルルお姉ちゃんだ。

「おや、ケイナも来たのですね」
「ええ、妹が無理行ってごめんなさい、ルーフェスさん」
「いえ、こちらから誘ったのですからいいのですよ。ナナの笑顔にいつも癒されてますからね」

 ルーフェスお兄ちゃんはポンと私の頭の上に手を置く。
 ルーフェスお兄ちゃんは撫でてくれるというより今みたいに頭に手を置くことが多い気がする。

「む、それじゃほぼ毎日会ってる私が可愛くないみたいじゃない」
「そんなことありませんよ。姫様も十分可愛いですが、もう少し私の手を煩わせなければもっとかわいげがあったかもしれないですね」

 それを聞いてメルルお姉ちゃんはブスッてしちゃった。
 まぁ、最近勉強から逃げる頻度が高くなってきてるらしいしね。自業自得だ。

「メルルお姉ちゃんも行くの?」
「うん、ライアス君もいるしね。せっかくなので会いに行ってみようかと」
「おや姫様。ナナと同じように本を見に行ってもいいのですよ」
「あーうん、それは今度の機会に」

 ばつの悪そうな顔をしているメルルお姉ちゃんを見てみんなで笑った。

「それではみなさん、ついてきてください」

 ルーフェスお兄ちゃんは本棚から2冊(白雪姫とももたろう)を取り出し執務室の外へと向かった。
 ルーフェスお兄ちゃん達の部屋はお城から出て5分の場所にある。
 一応、ルーフェスお兄ちゃんはお城の執事という立場であるため、城からそう遠くない宿舎に住んでいるのだ。

 部屋までたどり着くと、ルーフェスお兄ちゃんは部屋の中まで通した。
 奥まで行くと、ライアスお兄ちゃんが汗水流して筋トレしていた。

「こんにちわ。ライアスお兄ちゃん」
「こんにちわ。ライアスさん」
「おーがんばってるね。ライアス君」

 上から、私、お姉ちゃん、メルルお姉ちゃんの順に声を掛ける。  ライアスお兄ちゃんはこちらにすぐ気付き、筋トレをやめて汗を拭きながら近づいてきた。

「なんだ、みんなしてきたんだな」
「ライアス!姫様たちに向かってその態度ななんだ!」
「まぁまぁルーフェス。ナナちゃんは確かに本を見に来たんだけど私はライアス君に会いに来たんだから」

 ライアスお兄ちゃんはこの前メルルお姉ちゃんに力負けしてから猛特訓?してるらしい。
 もともと不機嫌そうな顔してるけど、メルルお姉ちゃんに会うとちょっと不機嫌になるのはそのあたりもあるだろうなー
 普段からメルルお姉ちゃんにルーフェスお兄ちゃんを取られてるしね・・・

「あっ、ルーフェスさんお菓子とお茶持ってきたのですけど、食器借りれますか」

 お姉ちゃんがバックを掲げてルーフェスお兄ちゃんに聞いている。

「ええ、ライアス、ケイナのお手伝いを。私たちは先に本を見に行くとしましょう」

 ルーフェスお兄ちゃんは私を促すと奥の部屋へと向かっていった。
 ついていった先の部屋に行くとそこには執務室にあったほんと変わらないくらいの大量の本があった。
 個人でこれだけの本を持っているなんて・・・

 一番近い本棚に近づいてみると綺麗に整頓されていることが分かる。
 しばらく最初の本棚を見ているとルーフェスお兄ちゃんが声をかけてきた。

「そういえば、ナナは錬金術の本と魔力制御の本を買ったみたいですね」
「あ、うん」

 まさか、いきなりその部分をついてくるとは。
 ルーフェスお兄ちゃんに振り向いてみるけど表情からは何も読み取れない。

「読むなとは言いませんが、それを実施することは今はやめてくださいね」
「えっ、なんで?」

 そういえば、ゲームでは国王様が錬金術に対してあまりいい表情見せてなかったような・・・
 その辺の理由はそういえば知らないなー、、ゲームは全コンプリートしたわけじゃないし・・

「あくまでも今ですよ。ナナは知らないかもしれないですが、魔力を小さいころから扱うのは少々危険です。私的には10歳くらいまではやめてほしいですね」
「そ、そうなんだー」

 まぁ、アニメや漫画を見ていると魔力制御失敗による暴走とかよくある話だよね・・
 まだ5歳だしもう少し大きくなるまでっていうことだろう。

「えー、10歳までちゃんと約束を守れるならその時は私が魔力制御について教えてもいいですし」
「ほんとう!?」
「えぇ、私がナナに嘘をついたことないでしょう?」
「うん、私ルーフェスお兄ちゃんと約束を守るよ!」

 ぶっちゃけ、ルーフェスお兄ちゃんが約束を守らない人にはまったくもって見えない。
 まだ「メルルのアトリエ」開始時には間に合うので慌てなくもいいはずだ。
 下手に失敗してお姉ちゃんに迷惑を掛けるわけにもいかないし、せっかく先生役をゲットできたのだ。

「さて、ナナこの文字のある本はここにありますよ」

 そう言って、奥のほうにある本棚に案内される。
 そこには30冊ほどの日本語の本が多種多様にあった。
 国語辞典もあるし・・
 どういうわけか、日本以外の国の本は見かけない気がする。

 棚を凝視しているとまた、ルーフェスお兄ちゃんが声をかけてきた。

「ナナは・・この本が読めるのですか?」

 一瞬の静寂が下りる。
 ルーフェスお兄ちゃん、直球すぎるよ!
 何を言おうか悩んでいるとさらにルーフェスお兄ちゃんが続ける

「別に悪いと言ってるわけではないのですよ。知られたくなかったのであれば秘密にします。ただ、ずっと読めていなかった私より先に読んでしまって少々複雑な思いだったので」

 あまり見ることはないだろう。ルーフェスお兄ちゃんが苦笑めいた顔をする。

「あ、あの誰にも、お姉ちゃんにも秘密にしてくれますか?」

 懐かしい日本語を見てちょっと感傷的になってしまっただろうか。一人でも私のことを知ってもらうのもいいのかもしれない。
 ルーフェスお兄ちゃんは無言で誰も入ってこないように部屋の扉に鍵を掛けてくれた。

 そして、私は話した。
 私が異世界からの転生者であること。
 たぶん、体がそこそこ出来上がった半年前に記憶がよみがえったこと。
 ルーフェスお兄ちゃんが所持している本が、異世界の日本という国の言語だということ。
 「アトリエシリーズ」に関する話は流石に伏せた。

「なるほど、そういうことであれば、納得がいきます。ナナの年を考えると絵本の文字を読めるだけでもすごいことですからね」

 そう言ってルーフェスお兄ちゃんがいつものように私の頭の上に手を置く。
 うっ、ちょっと嬉しくて涙でてきそうかも。

「ちなみにこの本には何が書いてあるのですか」
「えとね。白雪姫って言って異世界の国の絵本だよ」
「ほほぅ。ナナできれば、また今度暇なときに読み聞かせてくれませんか」
「うん!」

 そんな話をしている時に、扉が叩かれる

「兄貴、お茶の準備ができてるよ」
「わかりました。すぐにいきます」

 ルーフェスお兄ちゃんは声をかけてきたライアスお兄ちゃんに返答する。

「ナナ、休憩してまた見に来ましょう」
「はーい!」

 ルーフェスお兄ちゃんに背中を押されてみんなのところに戻って行った。
 そういえば、中の人の年を考えると自分の行動が幼すぎて恥ずかしい。
 やっぱり、思考は大人の考え方をできなくはないけど、精神は結構肉体に引っ張られるっているようで幼くなっている気がする。
「メルルのアトリエ」でもロロナが8歳?になって行動が幼いけど錬金術についてはすごかったしね。








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