メルルのアトリエ アーランドの妹錬金術士
旅立ち@ルーフェスお兄ちゃんに私の転生のことを教えてから5年の歳月が過ぎた。 私も10歳になり、「メルルのアトリエ」が始まるまで1年半というところまで来たのだ。 この5年で、お姉ちゃんはメルルお姉ちゃんのメイドさんになり、ライアスお兄ちゃんは兵士として働き始めた。 メルルお姉ちゃんは・・・特に大きく変わってないかも? ルーフェスお兄ちゃんは私から日本語を学び、実はひらがなとカナタカそれから小学校1年生くらいで習いそうな漢字くらいなら読めるようになっていた。 一人で「ももたろう」を読むことができた時はかなりの喜びようだった。5年とはいえ、政務を行いながら外国語を覚えたのだ。その執念は流石と言えよう。 私はというと、半年前にルーフェスお兄ちゃんから魔力制御の方法を教えてもらってから、こっそり錬金術を始めた。 といっても材料の問題からして「中和剤」と「手作りパイ」「ヒーリングザルブ」しかできてないけどね。 中和剤は、それこそ材料には困らなかったし、パイも普通の料理と同じ材料になるため、材料は困らなかった。 ヒーリングザルブは流石に普通の家にある材料じゃないからね。お小遣いで買ってちまちま作るしかなかったよ。 後もう一つ趣味というか特技を身につけている最中なんだけど、そのうち話すことにしよう。 ここ5年の間にいくつか私にも課題ができた。 それも、メルルお姉ちゃんが錬金術士になるまでに今後1年間で次のことをクリアしていきたいと考えている。 一つ目はお姉ちゃんことケイナの安全のこと。 「メルルのアトリエ」でもあるようにメルルお姉ちゃんの最初のメンバーとして入るんだよね。 お姉ちゃんの冒険者レベルを上げればかなり使えるのは知っている。 もしかしたら知らない人も多いかもしれないけど「メルルのアトリエ」ではお姉ちゃんは大器晩成型で最初はよわっちいけど、元アーランドの騎士であるステルクよりもステータスが高くなるのだ。 たぶん攻撃スキルを持っていたら最強キャラになっていたんじゃないかなー・・ なので、レベルについてはまぁ、始まってからでもたぶん遅くはないかも。 お姉ちゃんの装備である、あのなんでも入っているかばん(最初から錬金術作?)はいつの間にか手に入れていた。 問題はスキルかな。 あたりまえだけどお姉ちゃんのかばんの中にきずぐすりやヒールポーションなんてものは入ってない。 けど戦闘を行う上で準備しないわけにはいかないだろう。 きずぐすりやヒールポーションは後1年半程錬金術を頑張ってヒーリングザルブやネクタルを準備しておけば大丈夫だろう。 普通のお店に売ってあるやつでは即効き目があらわれないしね。 でも、お姉ちゃんは私が錬金術をやってることは知らないんだから、きずぐすりって言って渡せばいいわけだし、何とかなるだろう・・ ちなみに必殺技で使用するピコピコハンマーなんだけど、実はこの前お姉ちゃんの部屋に言った時、似たようなピコピコハンマーが立てかけられていた。 同じような能力があるかはわからないけど、どこで手に入れたのだろう・・ 二つ目は私の錬金術の向上。 はっきり言って、私には才能ないんじゃないかなと思う。 この5年で「メルルのアトリエ」で最初に貰う参考書「はじめての参考書」と「トトリのアトリエ」で最初に貰う参考書「はじめての参考書」を手に入れることができたんだけど・・ 3つしか作ることができないのだから。 今はクラフトを研究中なんだけどやっぱり先生役に誰かきてほしいよ。 ネクタルについても参考書も錬金術レベルもない私にはもしかしたら無理なのかもしれないなー。 魔力に関してもスズメの涙程度で、はっきり言ってこのままじゃ高レベルの錬金術を実施するのは無理だ。 冒険者レベルや錬金術レベルを上げることで少しくらいはMP上がるかもしれないけど。 しかし、錬金術がある程度行使できるようにならないと、お姉ちゃんのサポートは無理だ。 そして私は一つの決心をする。 今いる3人の魔女の誰かに弟子にしてもらうことに。 そうと決めれば、問題はお姉ちゃんたちの説得だ。 まだ、10歳で働くことないって言われそうだけど、周りの大人からはそこそこ評価されている。 特にルーフェスお兄ちゃんには考えてることが見透かされてる気がするものね。 最近だとむしろ国政の話で私に相談するほどだ。何考えているんだか・・・ 先にお姉ちゃんの説得方法の相談としてルーフェスお兄ちゃんのところにやってきた。 相談の手前、錬金術の話をするのはどうしようもないことだろう。 「ふむ、錬金術ですか。ちなみに用途は?」 「はい!お姉ちゃんの力になりたくて。たぶんルーフェスお兄ちゃんは国のために仕えないかって考えるのかもしれないけど、今のところ考えてなくて・・・」 私は錬金術の教師が必要な件をあれこれ話し始めた。まぁ、お姉ちゃんの話がなぜか7割占めていたのはご愛敬だろう。 「なるほど、いいでしょう。もし何かあれば都度、方針を決めていけばいいことですし。とりあえずは、期間1年半から2年くらいでしょうか」 実は既にルーフェスお兄ちゃんから度々アーランド共和国と加盟する話があるのを聞いていたのだ。 言うほどまだ詳しくなってないけど、そこからは「メルルのアトリエ」と同じように国力を上げるために錬金術士を派遣するという話は上がっていたみたい。 2年で錬金術をマスターできないかもしれないけど、後は派遣してくる錬金術士トトリに師事を仰げば、アーランドにずっといる必要もないしね。 「ちょうどアーランド共和国のジオ様がやってくるのでその時話しておきましょう」 「ありがとう!ルーフェスお兄ちゃん!」 1週間後、ルーフェスお兄ちゃんに執務室呼ばれた。 入ってみるとルーフェスお兄ちゃんの他に2人の人物がいるのに気付いた。 「きましたね。ナナ、こちらはアールズ共和国のジオ様です」 「ジオ様、はじめまして。ナナ・スウェーヤと申します」 「おやおや、そんなに畏まらなくてもいい。君が錬金術を学んでみたいって子だね」 「はい、可能であればアーランドの錬金術士の方々を紹介していただければと」 ルードヴィック・ジオバンニ・アーランド 通称ジオ、アーランド元国王にして大陸最強の剣士。確かアールズ国王様と仲がいいという話だ。 「ちなみに誰に師事したいのか希望があるかね?」 「はい、一応アストリッド様に。錬金術士は学んで理解すれば誰でも実施できる技術です。噂を聞きますと性格に難ありですが腕が確かのがアストリッド様と。次点でトトゥーリア様ですね。こちらも噂程度ですが、ロロライナ様の独特な表現を理解するのは大変難しいとお聞きしています。理解できるようであれば、アストリッド様の次に腕のあるということなのでロロライナ様に師事したいところですが、現状わからないので」 「なるほど。よく考えている。相手が受けるかわからないが、数年後にアーランドに派遣する錬金術士をロロライナ君と考えている。が、確かにロロナ君の表現はすごいらしいしな。んーどうしたものか」 「ロロナちゃんはだけど、あの人に自ら飛びなくてもいいと思うけどね」 と言って微笑んだのはジオ様の隣の人。 「はじめまして、ナナちゃん。私はエスティ。まぁこの方のお目付け役ね」 エスティ・エアハルト かつて、アーランド王宮の受付嬢。 今は確かお目付け役とかではなく、アーランドの監査役となっているはずだ。 お目付け役でもあるかもしれないけど。 年を気にしてるみたいだけど、30代には見えない気がする。 普通に綺麗だなー。 「はじめまして、エスティさん。ロロライナ様を知ってるんですか?」 「うん、あの子がひよっこの錬金術士の頃からね。あの子も錬金術の修行中は少しはまともだったけど弟子を持つ少し前くらいから変なテンションよね。まぁ、普通にいい子よ」 「ふむ、一応ロロナ君とトトリ君に紹介してみよう。アストリッド君に君を合わせるにはもうちょっと年齢が高くないと厳しいかもしれない」 ジオ様とエスティさんがうなずき合っていた。そんなにひどいのかしらアストリッド様って。 「ナナ、唐突ではありますが、10日後にジオ様たちがアーランドに戻られるということなので一緒に行きますか。一応ケイナには実習生として行くと説明済みですが」 唐突ではあるけどルーフェスお兄ちゃん準備良すぎ。 お姉ちゃんと離れるのはかなり辛いけど後のことを考えると学んでおきたい。 「あ、あの、いきたいです。行って錬金術を学びたいです」 「では、ついてくるといい。まぁ誰も弟子をとらなかったとしても他のことを学んでもよし、戻ってもよし。君はまだ若い。いろいろと挑戦するといい」 「ありがとうございます。ジオ様!」 こうやって私は大好きなお姉ちゃんと離れてアーランドへ旅立つことが決まった。 前へ 目次 次へ |