メルルのアトリエ アーランドの妹錬金術士
冒険者見習い




 ロロナお姉ちゃんは、依頼がまだ消化されてないものがあり、数日間出かけるといって朝食を済ませると出て行った。

 アストリッドお姉さまも忙しいらしく、出かけるとのことだ。
 いきなり放置になったが、今私に出いることを考える。
 町を見て回りたかったし、銀貨200枚渡されているが、ゲームのロロナを知る限り、まっすぐ戻ってくるのかも怪しい。
 お金が心もとないため、ギルドで錬金術のアイテムが売れるか、または町の外に出て食材を含め、採取を試みるつもりだ。

 そうと決まればと、バックを引っ掴みアトリエを出る。
 せっかくアーランドに来たのだから、ゲームに出ていた「サンライズ食堂」「ロウとティファの雑貨店」、あと武器屋にもよりたいけど時間はたっぷりあるのだ。
 まずは、食料だけでも確保しないとね。
 ゲームだと食事するってところ抜けてるけど、現実は甘くない。
 とりあえずはギルドに行ってみようかな。錬金術のアイテムが買い取りできるか確認してみよう。

 私はアトリエをでると目印に向かって歩き始めた。
 ギルドは旧アーランド城にて活動しているのとこと。

 まだ朝早いため、人通りも少なく、お店もあいてない。
 特に迷うことなく目的地へと着いてしまった。
 一応看板が立ってたので、入口もわかったの。

 中に入ると、ギルド内もまだ始業し始めたばかりなのか少々慌しい。
 目的の人物は既に受付にいた。

 クーデリア・フォン・フォイエルバッハ

 ロロナお姉ちゃんの幼馴染だ。
 「ロロナのアトリエ」だとロロナお姉ちゃんがくーちゃんって呼んでた気がする。
 確か背が140cmくらいしかないためコンプレックスに感じてたはずだね。
 現在はここギルドで受付を行っている。

「あ、あのおはようございます」
「うん?」

 まぁ、10歳の子供がギルドに現れるなんてかなり不振だっただろうね。

「あ、あの、これって買い取りできますか?」

 そういってカバンから取り出したのは、私が作り出した中和剤だ。

「中和剤・・・?えぇ、買い取りはできるけど、どこで手に入れたのかしら?」

 クーデリアさんは、私から中和剤を受け取り、中を確認しながら聞いてくる。

「え、えと・・・」
「あぁ、中和剤作れる人が限られているからね。しかもそこそこ高品質だし」

 確かに錬金術士は少ないけど、中和剤くらい作れる人がいないのだろうか?
 クーデリアさんは「これはBってところかしらね」って言いながら、私に視線を戻す。

「えと、この度錬金術士の弟子になりました、ナナ・スウェーヤと言います!よろしくお願いします!」
「えっ、トトリの?」
「いえ、ロロライナ・フリクセル様とアストリッド・ゼクセス様です」
「へーロロナとあいつのねー・・・・えっ、ロロナの!?」

 あははっ、すごく驚いてる

「そうです。それでその中和剤は拙いですが、私が作ったものです」
「なるほどねー。何でもってわけにはいかないけど、冒険者じゃなくても買い取りできるわよ」

 クーデリアさんはそう言うと、隣の受付(といってもちょっと離れてる)まで行って、ごそごそと何かを取り出し戻ってきた。
 ちなみにその受付にいた人はクーデリアさんが突然近寄ってきたため、何かされるのかと思ったのか始終ビクビクしてた。
 クーデリアさん・・我が強い人だしね・・・

「ちょうど中和剤の依頼があるわね。中和剤はこれ一つ?」
「あっ、ちょっと待って下さいね」

 私は同じ品質の中和剤を4つカバンから取り出す。
 クーデリアさんは中和剤を受け取ると十分に確認し、それから持ってきたものから2つ取り出した。

「ちょうど依頼が2つと3つのがあるわね。はい、これが報酬ね」
 合わせて銀貨200枚くらいとマジックグラス(という錬金術の材料に使える植物)を数本私の前に出す。
 というか、冒険者でもないのに冒険者で受けるときと同じ額をもらってもいいのだろうか?

「えっ、あ、あの私冒険者じゃないのですけど、こんなにもらっていいのですか」
「いいのいいの。どうせロロナかトトリしか受けない依頼だしね」

 アーランドとしては、錬金術の有用性により、その認知度を獲得しているが、そのアイテムの使用方法を知らない人はまだ多い。
 そもそも作り手が少ないのである。そして錬金術のアイテムは高価だ。
 数少なく錬金術の効果を知っていてほしい人がいても、その作り手が都度出かけていることもある。
 そのため、その2人が見に来るであろうギルドへ依頼することで落ち着いたのである。

「そういえば、あなた今何歳かしら?」
「10歳ですけど」
「10歳かー・・もうちょっと大きくならないとギルドはねー」

 クーデリアさんはウンウンと呻り始めたが、やがて大きくため息を吐くと私に紙を差し出した。
 ギルドの登録書類?

 クーデリアさんが言ううことはこういことだ。  冒険者ギルド自体は13歳からでしか入会できないが、錬金術というレアな技術を習得しているためもったいない。
 これから錬金術をやっていくのであれば分かると思うが、錬金術はお金がかかる。
 それならば、冒険者ギルドに入会し、依頼を受ければギルドとしては錬金術の依頼を消化できるし、ナナは錬金術の熟練度やお金を手に入れることができる。
 一石二鳥とはこのとこだ。

 実際には、冒険者見習いと言うことになるとのこと。  冒険者レベルは上がらないが、ポイントも実績に応じて加算させてくれるらしい。13歳になって改めて冒険者登録を行うとき、ポイントがそのまま反映されるとのこと。
 クーデリアさんにその権限があるのか知らないけど、そう言う処置をとってくれた。  とりあえず行ける場所はアーランドの近場とアランヤ村の近場。現時点では、2つの町村は馬車移動が必須らしい。
 ギルド登録は結構すんなり終わり、ギルドカードを手に入れた。
 先ほどの2つの依頼もポイントに加算してくれるとのことだ。

 登録が終わり、次に近くの森に移動する。
 登録はしたものの、10歳だけに戦闘面が不安のようだ。
 クーデリアさんと一番近いところにある採集地、うに林へ移動する。
 その際、お互い改めて自己紹介を行い、クーデリアお姉ちゃんと呼ぶ権利を獲得した!



 さっそく近くの森、うに林についた。
 うにってまんま栗なんだよね。
 まぁ、どういうわけか年中実ってるけどね・・?
 アールズでも採れたし、目新しいものではない。

「こら、ナナ。あんまりちょこちょこ走り出すと危ないわよ!私よりもちっちゃいんだから」 「はーぃ、うわっ!」
 言うが束の間、そのモンスターが出現する。

 ぷにぷに

 この世界にはモンスターがいる。
 ぷにぷにはゼリーというかスライム状の物体に大きな目を2つつけたモンスターだ。
 一応この世界で最弱のモンスターだし、一般人でも少々剣の心得場あれば誰でも倒せるくらいに強くない
 出現したのはさらに弱い青ぷにだしね。

 私は落ち着いて2つの人形を取り出す。
 メルルお姉ちゃんとルーフェスお兄ちゃんの人形だ。

 クーデリアお姉ちゃんは、離れて私を見てくれているが、いつでも援護できるように愛用の銃を握っている。

 ここからは人形師としての私。
 人形には刃渡りの長いナイフを握らせている。
 ルーフェスお兄ちゃん人形に目を付けたぷにぷには、突進するが上空へひらりとかわす。
 最長5mくらい私から離れられる人形は軽々と踊るようにかわしそのままぷにぷに切りつける。
 怒ったぷにぷにがまた突進しようとしたが、後ろから近づいたメルルお姉ちゃん人形にぷっすり!
 あっけなく、ぷにぷには絶命した。

「ぷにぷに程度だったら、問題ないようね」
「はい、最大4体動かせますし、ウォルフ1体くらいまででしたら、難なくいけるかもです」

 ウォルフは狼のこと。
 素早さが早いため要注意だが、低年齢で弱くても手数が多いため1体までだったら倒せる。

「とりあえず、この森くらいまでだったら大丈夫そうね」

 クーデリアお姉ちゃんから合格をもらい、それから採集を少し終えると、アーランドへ戻った。

 1日中採取と慣れない戦闘を行い、結構疲れたかも。
 アトリエに戻ると戦闘で汚れた人形を綺麗にしてあげ、ご飯も食べずに泥のように眠りについた。








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