メルルのアトリエ アーランドの妹錬金術士
フラム




 アーランドにはあれからさらに次の日になってたどり着いた。
 行きで素通りした旧街道で、素材の採取を行ったからだ。  取得できた震える結晶や雲綿花は、それぞれ前者が雷属性のに関する錬金術アイテム、後者が布関連の素材になる。
 フラムはたぶん錬金術アイテム的にレベルは足りていると思うので、雷属性の攻撃アイテムであるドナーストーンや衣服用布クロースを作ろうと思ってる。
 あ、インゴットも作りたいなー。クロースもだけど人形強化したいし。

 そんなわけでアーランドに戻ってたっぷり休んだ後、フラム作成に入った。

 フラム

 錬金術で作成できる初歩的な爆弾である。
 アトリエシリーズ通してある爆弾で、アーランドではフロジストンという材料を使用する。
 そういえば、上位版である、メガフラム、テラフラムってあるんだけど、あれって材料が全く同じだよね?
 たぶん、テラフラム(ロロナ時代)だったんだけど、ロロナお姉ちゃんがトトリお姉ちゃんにレシピを渡す時にはさらに強力な爆弾(N/A)のレシピを作っていた。
 テラって大袈裟だしメガにしとこうってことかしらね。

 実際のところ、主な材料としてフロジストンと中和剤、中和剤になるんだけど、各ゲームで違いがある。

 (ロロナ時代)フロジストン2つ、火薬素材1つで炎ダメージ小〜大のフラム作成が可能。

     ↓

 (トトリ時代)フロジストン1つ、中和剤1つで炎ダメージ小〜大のフラム作成が可能。(少ない材料による同ダメージを引き出す調合を確立?)

     ↓

 (メルル時代)フロジストン2つ、中和剤1つで炎ダメージ??のフラム作成が可能。(低レベル作成可能及びダメージ平均化?)

 必要レベルもメルル、ロロナ、トトリの順に難しくなる。
 まぁ、トトリの時代はあくまでも開拓期なので戦闘も多かったしね。
 トトリの場合、各爆弾の上位爆弾(フラム⇒メガフラムなど)とかでるけど、メルルの場合は上位爆弾はでてこない。
 そういうわけで、強力な爆弾を求めて、トトリレシピで行こうと思っている。
 幸いトトリが作成したフラムの参考書はロロナが書いたものであり、写しが部屋に残っていたのだ。
 近辺で採れたものだけあって品質の良くないフロジストンしか採れなかったため、ダメージ小のフラムしかできないと思う。
 だったらダメージ平均化されたメルルレシピ(たぶんダメージ中くらいあるんじゃないかな?)でやればいいじゃないと思うかもしれないけど、錬金術レベルを上げたいのだ。
 たぶん中和剤やパイとは約1年くらい繰り返しやっていたため、錬金術レベルが10には届かないにしろ、近いと思っているのでギリギリいけるんじゃないかなー。

 フロジストを乳鉢に入れて魔力を込めながら粉々にしていく。
 注意することは、すごくゆっくり丁寧に!
 フロジストは燃素、いわゆる燃える素の塊なのだ。
 注意しないと擦すり合わせるだけで火花がたつため危険なのだ。

 軽くビクビクしながら作業していたけど、ほどなくして準備していたフロジストを粉々にする。
 といってもゆっくり時間掛けてやってたため、朝食後すぐに始めた作業は昼食時間前あたりまで来ていた。

 「プチマスター、これを」

 ホムちゃんがフラムの型を持ってきてくれる。
 これにフロジストと中和剤を混ぜ合わせたものを注ぎ込む。
 後はできるのを待つだけらしい。
 固まるのが早いらしいので夕方にはできそうだ。

「プチマスター、昼食は外で食べましょうか」

 お勧めの料理屋があるらしい。
 まぁ、今から作っても時間かかるしね。

 一応、すごく汚れているわけではないけど、着替えてこよう。
 錬金服は耐熱効果があるけど、フロジストの粉末付けて食事はね・・
 とはいっても替えがあったので同じ服に袖を通す。

 私は、急いで着替えてくるとホムちゃんと一緒にアトリエを後にした。

「こちらです」

 ホムちゃんと歩いて5分くらいした場所にそれはあった。
 サンライズ食堂。
 店内に入ると少々昼食の時間を過ぎているものの、賑わいあふれている。

 「おや、お前はロロナんとこの」

 偶々厨房から顔を出したその人はホムちゃんに反応した。

「お久しぶりです、イクセル様。本日はこちら、プチマスターをお連れしました」
「ぷちますたー?」

 なんだそれって思うだろうね。
 イクセルさんはホムちゃんの傍にいた私を凝視する。

「錬金術士?」
「あ、はい!先日から、アストリッドお姉さまとロロナお姉ちゃんの弟子になりました!」

 まだ、1度も教わってないけどね・・ホムちゃんからしか・・・

「ほほぅ、あの二人のね。俺はイクセル。ここサンライズ食堂の店主で、ロロナの幼馴染だ」

 イクセル・ヤーン

 ご紹介の通り、ロロナお姉ちゃんの幼馴染にしてサンライズ食堂の店主。
 「ロロナのアトリエ」ではロロナお姉ちゃんと一緒に荒野を駆けまわり、錬金術の材料を集めたりしている。

「ふむ、だったら今日お前らの分は奢りにしてやる。確かトトリの時にも奢ってやったしな。あいてるところ座ってな」

 そう言って、イクセルさんは厨房の中に入った。
 店内を見回してみると、人は多いがテーブル席はポツポツあいている。
 その時、ある人物と目があったので、近くまで行ってみる。

「こんにちわ、クーデリアお姉ちゃん♪」
「あら、ナナ。あなたも食事かしら?私たちもちょうど来たところだし一緒にどうかしら」

 私がどう?ってホムちゃんに尋ねるとコクンと頷いたので相席させていただくことになった。

「あなたが、トトリちゃんの妹弟子ね」
「あっ、はい!ナナ・スウェーヤといいます」

 訪ねてきたのはクーデリアお姉ちゃんの連れだった。

「私、クーデリア先輩と同じギルド受付やってる、フィリーって言うの。よろしくね」
「はい、フィリーお姉ちゃん!」

 ガバッとクーデリアお姉ちゃんに抱きつかれた。

 フィリー・エアハルト

 冒険者ギルドの受付嬢。
 フロントクエスト受付担当だけど、すごーく人見知り。たぶん、トトリが冒険者になってから4,5年くらい経っているはずだからそれなりに慣れてきてるのかな?
 名前から分かる通りエスティさんの妹さん。
 確かもともと受付嬢をエスティさんがしていたんだけど、婿探し(半分本気だろうけど、たぶんジオおじさまのお目付け役を誤魔化す為のいいわけかも)の旅に出かけたため、止む無く代行することになったみたい。
 人見知りだけど、他人の色恋沙汰が好き、女の子同士など腐女子成分配合しつつ、妄想好きな人。

 席はクーデリアお姉ちゃんの横に私で私の前の席がホムちゃんだ。

「ほんっっとにあなたかわいいわね。私よりもちっちゃいし!」
「あはは、私10歳にしては小さくて・・」
「いいのよ。あなたの身長をバカにするやつは私が張り倒すから!」

 なんとも頼もしい。

「そういえば、今ロロナってアランヤ村の近くまで行ってるのよね。あの女にひどい目に会ってない?」
「えと、大丈夫ですよ。実はまだアストリッドお姉さまも実はまだ戻ってきていませんし」
「あら、そうなの?」
「はい。ここ一週間くらいはホムちゃんと採集に行ったり調合を教えてもらったりしているので」
「まぁ、それなら安心ね。それにしてもちょっとはその服も様になってきたわね」
「えへへー♪最初はずっと着るの気恥かしかったんですけどね」

 と言ったら、微妙な顔された。

「はははっ、ロロナやトトリももっと着飾ればいいのにそんなのお構いなく着てたしな。はいっ、おまちどうさん」

 声をかけてきたのはイクセルさんだった。

「あ、イクセルさん。ありがとうございます。でも錬金服って危険な材料の液体や粉末、匂いとかも付くので替えがもうちょっとほしいです」
「その言葉をあの二人に聞かせてあげたいわね」
「トトリちゃんも外出時はほとんど錬金服だったしね」

 他の人たちもたくさん錬金服持ってるのかな?流石に着続けるわけにはいかないだろうし。
 そんな風に話してる間に、イクセルさんが料理を並べていった。

「人気メニューの一つ、イクセルプレートだ」

 すごくおいしそうな匂いがする。
 ボリュームもあるけど、お昼に食べるのにちょうどいいかもしれない。

「あ、あのほんとにいいんですか?なんかすごく高いのですけど・・・」

 メニュー表を見ると単価760・・・
 採取前に冒険者ギルドで稼いだお金があるので買えなくもないけどね。

「いいよ。余裕があるときにまた食べに来てくれよ。まぁ、さすがにイクセルプレートは毎回手を出せないかもしれないけど、他にもうまいものあるからさ」

 というわけで、ありがたく頂くとする。
 まずは、目についたお肉を切り分けて一口サイズを口にする。
 んー、すごくおいしい!
 お姉ちゃんの料理もおいしいけど、流石プロだなー
 材料のうまみを良く引き出してる。

「プチマスター、お口にたれがついてますよ」

 ホムちゃんが真正面から私の口周りを拭いてくれる。

「ありがとう♪ホムちゃん!」
「いえ、これくらい何度だってかまいません」

 少々恥ずかしかったけど、とりあえずは目の前の料理に集中する。
 くー、イクセルさんいい仕事ほんとしてるよ!
 「ロロナのアトリエ」「トトリのアトリエ」ではそれぞれロロナお姉ちゃんとトトリお姉ちゃんの錬金術で作った料理と対決してたっけ。
 向上心と技術を研磨し続けることによって今があるんだろうなー。

 ふと、気がつくとみんなの視線が私に集まっていることに気付いた。
 な、なんだろ、すごく気恥かしいのですが。

 顔を上げると、クーデリアお姉ちゃんが今度は口周りを拭いてくれる。

「フィリー、ナナがギルドに来たらまた私が対応するからね」
「なっ!クーデリア先輩、横暴ですよー!」
「あら、あなたジオ様からアールズへの派遣の話が来ているのでしょう。だから新しく冒険者になる人に関しては私が受け持つって話になったじゃない」
「うー、確かにそうですけどー」

 私に抱きつくクーデリアお姉ちゃんを睨むけど、本人は気にする様子もない。
 それにしてもアールズ開拓の話は、まだ1年くらい先なのにギルドは少しずつ動き始めてるんだね。


 それから私たちは楽しくお話しながらお昼ご飯を頂いた。
 午後からはちょっと買い物して帰ろうかな。
 食材も買い込んでおきたいけど、人形の材料も買っておきたいのだ。
 自分でクロース作りたいけど人形の消耗が激しいしね








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