『お代わりいりませんか』 赤竜のロクスは、空腹をしのんでいた。ぐぅぐぅと腹の虫が鳴り響く。 「あー、くそったれ。腹減ったなぁ… 普段は嫌でも食いもんの方からやってくるのに、もう2,3週間はろくにありつけてねぇ」 おかげで痩せられたのは嬉しいが、筋肉も衰えてしまうので素直に喜べない。 「思いっきり食いてー。今なら腹がパンクしそうなぐらい食えそうだぜ」 だがロクスはその考えをすぐに後悔する事になる。 彼が空腹に耐えかね、ふらふらと歩いていると…いつの間にか知らない風景が視界に映る。 「・・・どこだ、ここ?」 周囲を見渡すと、苦しそうに倒れる動物たちの姿があった。 体が丸々と膨れ、食べ過ぎのようにも見える。 「あれ、ロクス君?」 薄水色の竜、ケイファスも向こうからやって来る。 「ん、なんだお前か」 見知った顔があり、ホッとするロクス。 「しかし、なんなんだここは?」 「わからない僕も気が付いたらここに居たんだ」 と、ここでクイクイっとロクスは尻尾を引っ張られている事に気付いた。 何事かと思って振り向くが姿はない・・と思ったら足元に、小さな少女がいた。 人間だ。 「なんだ、こいつ?」 ニコニコしながら、まるで「赤ずきん」のような少女はスプーンを差し出す。 「・・・くれる、ってのか?」 何か怪しげな色をしているが、いい匂いはする。なんだか今まで嗅いだことのない、独特の香り。 何か話しかけてきているが・・・言葉が通じない。 「なんだか、余ってるから食べて欲しいんだって」 よくわからないが、くれるというなら貰っておこう。 勧められるまま、口にスープのような、流動食のような、妖しげな代物を飲み干した。 意外にうまい。 夢中になって、2匹はパクパクと飲み込んでいく。 「鍋にある分、全部食っちまってもいいのか?」 気付けば、約15リットルほど入りそうな鍋は空っぽになっていた。 だが、気付けば追加で5つの鍋が。どうやら、まだまだ食えるらしい。 「へへ、ちょうど腹が減ってたところだ、もっとお代わりしてやる」 あーん、と大口を開いて指差す。 もっとくれ、というジェスチャーをした。 それを見て少女はコクコク頷き、先ほどよりもスピーディーに、かつ量も多くとってロクス、そしてケイファスに食べさせていく。 特大のスプーンは1すくいで、ラーメン1杯を食ったぐらいのボリュームがあったが、メタボ竜の彼らにとっては朝飯前だった。 「ふぅ、うめぇなぁ(モグ。ゴクン。モグ。ゴクン。モグ。ゴクン。」 「本当だね〜。意外と飽きない味だし、まだまだ食べれるよ」 もしゃもしゃと、その場から動かずにまるで肥育されるフォアグラのように少女に餌付けされる竜達。 次第にムクリ、ムクリと、そのお腹が成長し始める。 「ふぅ、ふぅ、うっぷ。結構食ったな、そろそろ遠慮しとくか・・・?」 「僕もうお腹いっぱーい…」 こんもりとお腹が盛り上がり、ロクスもケイファスも起き上がるのが億劫なぐらい食べてしまった。 ざっと、一般竜5、60匹前は食っただろうか? 腹がパンパンに膨れている。 「おう、もういいぜ嬢ちゃん。うっぷ、見てくれこの腹、もう限界だわ」 しかし、少女はポンポンと腹を叩いて満腹だ、というジェスチャーを見ても変わらずにその鍋を進めてくる。 見ると、ズラリと10個以上の鍋が既に用意されている。 ズイ、と差し出されるスプーンを仕方なくくわえて飲み込むロクス達。 「い、いや、(んぐっ)だから、もう、入らないって・・・げぷぅ」 「ふぅっ、ふぅっ、お、お腹、がっ・・・もう、無理だよぉ」 涙目になるケイファスは、必死にお腹をおさえつける。 だが、口を閉じようとしても魔力でもかけられているかのように、スプーンが口の中に押し込まれる。 「うぇっぷ!えふっ、うぉふっ・・・・むしゃむしゃ、うおうーーぷぅう!」 ビクッ、と体がときおり痙攣を起こす程、少女は限界を超えたロクス達にFeedingを続ける。 しかも、食い初めて1時間も立ってないというのに、腹ははち切れんばかりに膨れてるし、それだけじゃなく、体までぐんぐん太り始めていた。 「んがぁーー!馬鹿っ、やめろっ!腹がパンクしちまうっ、うっ、うっ・・・うーーーっぷ!」 ぶるぶると震えながら、全身の肉と一緒に、ふかふかなボディが大胆に揺さぶられる。 ググ、グググ!  ロクス、そしてケイファスの腹部は既に4倍近くまで膨れ上がり、ウエストは相当なものになっていた。 首周りも太く短く、手足までパンパンに太り始める。 「も、もう、食え、ねーっで、の、ぐ、ふぅ、っう、ふぅ、ふぅう!」 「うぅ、ぅう〜・・・」 少女より何倍も大きなドラゴン達が、涙目になって必死に首を左右に振り、口を閉ざす。 だが、鍋は次々と空になっていき・・・それに比例して彼らの体はぶっくぶく太り、膨張していった。 「パ、パ・・・・パンクしぢまぅ”う”う””””〜〜〜〜!!?」 腹が今までにないぐらい激しくボヨンっと揺れると同時に、ボン! と更にロクスの胴体は2倍のサイズになった。 そして、彼はとうとう意識を失う。ケイファスはそれより少し前にギブアップして舌を出したままばたんきゅーと倒れている。 ちぇ、とつまらなそうに少女はそんな彼らを見限ると、残った鍋の中身を片づけるべく、次なる犠牲者の元へと向かった。 終わり