世にも太膨な物語 〜〜〜〜〜〜 ルカリオは、鼻歌をうたいながら両手で果物がいっぱい入った紙袋を抱えて街道を歩いていた。 そんな彼に、声をかけるポケモンがいた。 「もし、そこの貴方…見たところ、食べるのがお好きなようですね」 不思議な雰囲気を出す、ゴーストポケモン。しかし、その正体は何故かみやぶれない。 「実は新商品のモニターを募集しているのですが、是非協力して貰えませんか?」 内容は新商品のポテトチップスやお菓子類の試供品を食べて貰う、ただそれだけ。 リオルは怪しいと思って断りたかったが、試供品を食べたルカリオ師匠はキラキラと目を輝かせ、是非食べたいですと満面の笑みを浮かべた。 そして、次の日・・・さっそく荷物が届けられた。12袋ものポテトチップスが入ったダンボール箱。 嬉々としてルカリオ師匠はそれを食べた。午前に3袋、午後に7袋、そして夜食と一緒に2袋。 パリポリと小気味よい音を鳴らしながら、師匠は夢中になってそれを食べた。 次の日も、12袋入ったダンボールが置かれていた。リオルは、1週間で12袋にしてくださいよーと注意したが、ルカリオは大丈夫大丈夫、と笑ってポテトチップスに手を付ける。 数日経つと、今度はダンボール箱が2つルカリオの元に届けられた。24袋のポテトチップス。 どう考えても1日で食べきる量じゃないのに、ルカリオ師匠は普段のボリュームあるご飯とそれを余すことなく食べた。 6日後、次第にルカリオ師匠が修行やトレーニングを怠けるようになる。 「ねぇ、師匠。最近、急に太ってませんか?やっぱり、お菓子を食べ過ぎなんじゃ・・・」 今ではポテトチップス24袋に、板チョコレート10枚。食べきりサイズのチョコチップクッキーが50枚送られていた。 「もぐもぐ、そうだなぁ、ちょっと食べ過ぎたかもしれないね。少し、ご飯の量を減らそうか」 「め、珍しいですね。師匠がご飯の量を減らすなんて」 けど、この時から違和感に気付かなければいけなかった。リオルは後程後悔する事になる... 2週間後。ルカリオ師匠の太り具合は凄まじかった。ソファーでゴロゴロしながら、TVを見つつ、常にポテトチップスを食べているイメージがあった。 修行メニューを渡され、リオルはそれをやっている。前は稽古に付き合ってくれたのに、今は食っちゃ寝するだけの生活。 「(ポリポリ…)ん、なんだもう空になったのか。けど、この新味もなかなか美味しいな〜 明日も持ってきて欲しいな」 すでにウエストは20cm以上増えていた。食べ過ぎて腹が膨れたわけではなく、この短期間で脂肪を蓄えすぎたのだ。 サイコソーダやミックスオレと、お菓子を交互に食べる。ろくに運動せず、全くカロリーは消費されない。 余分な物ばかり溜まっていく。 1ヶ月後… 師匠はまだ食べ続けている。 「な、なんでこんなに・・・」 リオルは送られてくるダンボールの量に愕然とする。山積みになり、置き場所に困るほどだ。 以前、処分しようとこっそり運んで遠くに持って行ったのに、 気付けば部屋で師匠がお菓子をパリポリ食べ続けている。 「うーん、この味もやめられないなー。けぷ」 袋を開ける。空にする。すぐさま次の袋に手を伸ばす。 すでに1枚ずつ食べるのではなく、ざらざらと大量のチップスを口の中に入れ、部屋は空になった袋で埋め尽くされていく。 「し、師匠…」 何度止めても、師匠はお菓子を食べ続けた。食事もやめて、完食だけ一日中。 栄養バランスが悪くなる、と伝えても栄養表示を見る限りちゃんと補えているから大丈夫と笑って食べ続けた。 数百キロを超える風船デブと化しており、すでに寝たきりの生活になっている。 だが、少し目を離すとなぜか手元には常にお菓子が補充されており、どうやっても間食をやめさせられない。 こんもりと盛り上がった腹肉。パツパツの太もも。たるんだアゴ。ぷよぷよな頬っぺた。 誰がどこから見ても重度肥満ポケモン。 バンギラスやボスゴドラにも助けを求め、ポテトチップスを協力して減らして貰った。 捨てても戻ってくるが、どうやら食べきればその日の分はなくなるようだ。 膨らむ勢いで肥満化していくルカリオをなんとか助けるため、バンギラスとボスゴドラも無理をして食べる。 だが、彼らも同様の症状が進み… バンギラスも店を休業し、ひたすら部屋でジャンクフードやお菓子、ポテチを食べ続ける生活になる。 様子を見に行ったリオルは、その状態に愕然とした。 部屋の壁に到達しそうなほどの腹周り。常にギシギシと不穏な音を立てる床や天井。 パンッパンに膨れきったバンギラスの姿は、将来のルカリオの姿を暗示しているようだった。 不安にかられ、他の協力者たちの元にも行くが同様で、なぜかお菓子を食べ続けており、そして酷く肥え膨らんでいた。 「・・・師匠・・・!」 リオルは急いでルカリオの元へ走った。そして、彼のいるはずの部屋に行くとそこには本当に変わり果てた姿のルカリオが仰向けに倒れていた。ひしゃげたベッドやソファのある部屋の中央。 その中心にいるルカリオのサイズは元・デブポケモンの筆頭カビゴンなど軽く凌駕していた。 酷く膨れ上がったお腹は、そろそろ天井に到達しそうだ。 「ふぅっ、ふぅうっ・・!」 そんな状態になってもバリボリとお菓子を咀嚼し続けている。 「リオル・・・ふぅ、ふぅ、助けて、くれ、もうお腹が、耐えられそうにない…」 「そ、そんな、師匠!」 かけよって、手に持つお菓子をはぎとろうとする。だが、凄い力でビクともしない。 「や、やめられないんだ…ふぅふぅ、このまま、食べ続けたら、もう、う・・・!」 ぷるぷると小刻みに体が震えている。とうに限界を越えた肉体に、更に物を詰め込み膨れきっている。 そんな状態でフルスピードで食べ続けるルカリオ。リオルはどうすればいいかわからず、師匠のお腹に乗り、膨張を止めようと抑え込んだ。 だが、ググ、グググ…とみるみる膨れていくルカリオの体を実感できるだけだった。 ギシ、ギシ・・・ギシ・・・ 背中が圧迫される。天井と師匠のお腹に挟まれ、身動きがとれなくなった。 このままでは、窒息してしまう。けど、リオルは自分の身よりも師匠の身を案じた。 なんとか、この肥満化と腹部膨張が止まりますように・・・! しかし、リオルの願いも空しく天井は破壊され、部屋のあらゆる家具や扉、窓にいたる全てがルカリオのぶくうぅーと太っていく体に飲み込まれ押しつぶされ、とうとう家が吹き飛ばされた。 「も、もう、だめ、だ・・・爆発、しそう・・・だ・・・」 師匠の言葉が聞こえ、そして顔を上げ師匠の全景を見渡すと十数メートルの巨体が 「うわぁ!!!??」 ガバッと飛び起きると、眼前に師匠のデカッ腹があった。 しかし、そのサイズは普段のものだ。 「・・・ゆ、夢オチ?」 寝ぼけて、師匠のベッドに来たのかな。にしても、恐ろしい夢だった。 「むにゃ・・・ん、どうしたんだいリオル?」 「い、いえなんでもないです」 ・・・見慣れた体型なんだけど、師匠はやっぱり相当おデブだった。 なんとかダイエットしてくれないかな。 「あれ?」 「どうかしたのかい」 「い、いえ」 窓に、ゴーストポケモンが居たように感じたけど気のせいかな? とりあえず、夢で良かったとリオルは安堵する。 しかし、部屋の隅に置いてあるダンボール箱を見て愕然とした。 中には12袋ものポテトチップス。 「え…」 リオルは声を失ってしまい、その場に立ち尽くした。 終