お嬢さん「現実逃避、しませんか?」2
- 1 :1:2012/10/08(月) 15:40:24.19 ID:HmR9eh9oo
- 前スレ
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349467180/
vipでやっていたものですがスレが埋まったので、こちらで続きをやらせていただきたく。
1スレで終われず申し訳ない。
よろしくおねがいします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1349678424
- 2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽):2012/10/08(月) 15:40:51.35 ID:sjNvjB4AO
- 乙です
- 3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:42:02.96 ID:mIO350Xxo
- イエーイ
- 4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:42:28.94 ID:UASAyZteo
- >>1乙
- 5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:42:59.06 ID:PlTfklvDo
- >>1
乙
- 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:42:59.71 ID:RgGbkqvFo
- 乙
- 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:43:06.18 ID:oCgD9iceo
- キター
- 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県):2012/10/08(月) 15:43:07.78 ID:WOpQCW17o
- >>1乙
- 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/08(月) 15:43:14.65 ID:VFRnvSc0o
- 乙!
- 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2012/10/08(月) 15:43:37.15 ID:7LNFxePe0
- >>1
乙
- 11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:44:52.81 ID:Wc4LvhIYo
- いちょつ!
- 12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/10/08(月) 15:45:00.14 ID:SCa6wQ4qo
- >>1
おっつ
wwktk
- 13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:45:01.95 ID:ArhuvC+M0
- >>1頑張れ!超頑張れ!
- 14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:45:35.89 ID:10bTM69go
- >>1乙!
- 15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/10/08(月) 15:46:13.15 ID:XSSPrpo7o
- >>1乙!
- 16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:46:45.70 ID:kNOYU8fs0
- >>1乙カレー
- 17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/10/08(月) 15:47:09.41 ID:JW17U2D2o
- さあどうなることやら
- 18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2012/10/08(月) 15:48:07.02 ID:XRYwdH8AO
- >>1乙かれ!
- 19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:48:24.69 ID:5oxMwSjGo
- 書き込みテストも兼ねて>>1頑張れ見とるよ
- 20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:49:02.74 ID:Wc4LvhIYo
- ここってsageるべし?
- 21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/08(月) 15:49:55.05 ID:BjpVHCUC0
- いやあ、飽きさせないね。
- 22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:49:56.63 ID:B0Ws1Lvjo
- 一応NIPのマナーとして>>1以外はsageたほうがいい
- 23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:50:29.78 ID:Wc4LvhIYo
- おk
- 24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:50:42.83 ID:o4Gk0A8IO
- >>1乙
- 25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/10/08(月) 15:52:30.11 ID:XbAEvFzbo
- >>1乙
- 26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 15:56:07.33 ID:cHOszhufo
- >>1乙
- 27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/08(月) 15:56:39.28 ID:HPe4cYr4o
- ここなら思う存分支援できるぜー
- 28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/08(月) 15:57:26.64 ID:HmR9eh9oo
- でごめん。
移動して早々で申し訳ないんだけど、
ちょっとねかしてください。
なんか楽しくて書いてたら、丸一日ほとんど書き続けだったみたいだし。
- 29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/10/08(月) 15:58:47.34 ID:DsaIkihco
- 無理すんな休め
- 30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北):2012/10/08(月) 15:59:00.90 ID:+TdZLqLAO
- それスゴい気になってた
おつか〜
またの〜
- 31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県):2012/10/08(月) 16:00:21.18 ID:WOpQCW17o
- 休め・・・!休め・・・!
- 32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2012/10/08(月) 16:00:48.89 ID:7LNFxePe0
- 無理はよくない
気長に待つよ
- 33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 16:01:32.73 ID:ArhuvC+M0
- 気にせず休んでくれー
このまま続けられても心配だし
- 34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 16:02:23.67 ID:ArhuvC+M0
- ごゆっくりお休みくださいませ
- 35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 16:06:17.26 ID:Gsi2a/k00
- まぁ寝てろwww
- 36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/08(月) 16:07:07.28 ID:VFRnvSc0o
- 徹夜だったし俺も寝よう
- 37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 16:07:44.10 ID:WOpQCW17o
- とりあえずこの隙に「保健室〜」を読んでこよう
- 38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/10/08(月) 16:10:06.76 ID:Q0qYjhqXo
- 途中で保険室の人かなと思ってたけどやっぱりそうだったか
あれは面白かったよ
- 39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/08(月) 16:14:25.03 ID:yu8vycz+o
- いちもつ
- 40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/10/08(月) 16:15:56.98 ID:ttCnNByy0
- ここは支援と保守いらないからな
- 41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 16:30:40.27 ID:nlHRpeGSO
- >>1乙
〆楽しみにしてる
- 42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/08(月) 16:43:32.94 ID:HPe4cYr4o
- すまん、「保健室」の正式なタイトルを教えてくれないか
- 43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/10/08(月) 16:47:13.19 ID:Q0qYjhqXo
- 紳士「お暇でしたら保健室の先生になってみませんか?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1319910952/
- 44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 16:49:01.62 ID:Wc4LvhIYo
- あと何レスくらいかおしえてほしい
- 45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/10/08(月) 16:54:42.60 ID:AQm5B2VY0
- wktk
- 46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/08(月) 16:56:34.90 ID:HPe4cYr4o
- >>43
アルティメットさんくす
- 47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/08(月) 17:01:39.49 ID:XWSHq8oY0
- ここなら荒らしもいないしゆっくりやればいいさ
- 48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/08(月) 17:06:02.46 ID:mnr/rIV7o
- 荒らしにも悪気は無かったはずだ…
あいつらは常識を代償にして現実逃避してるだけなんだ…
- 49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県):2012/10/08(月) 17:07:34.80 ID:x9e8YFqbo
- >>1おつ!
- 50 :sage:2012/10/08(月) 17:08:40.42 ID:3gOQVqnF0
- つまりメイドさんが常識的な人に
- 51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/08(月) 17:15:20.99 ID:wyNFlcoAo
- 人間の形にするの大変だったろうな
- 52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 17:26:19.69 ID:nlHRpeGSO
- >>48>>50
ワロタ
- 53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県):2012/10/08(月) 17:36:59.96 ID:x9e8YFqbo
- ここってBBから直通でこれないの?
- 54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 17:45:21.21 ID:woPX1PbIO
- >>53
外部板登録しないとできない
- 55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 17:46:32.47 ID:B0Ws1Lvjo
- 保健室読んできたお
ハッピーエンド希望
- 56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県):2012/10/08(月) 18:01:09.23 ID:x9e8YFqbo
- >>54
ウラルお願いします
- 57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/10/08(月) 18:23:10.68 ID:Q0qYjhqXo
- SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
メイド「だから愛しています”ご主人様”」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266890899/
少女「貴方のための娼館へようこそ。存分にお楽しみくださいませ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1300623066/
紳士「お暇でしたら保健室の先生になってみませんか?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1319910952/
- 58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2012/10/08(月) 18:30:02.04 ID:SZy5jvt60
- 保健室読み返してきた
気づいたらスレ落ちてて全部読めてなかったんだよなコレ
このSSも期待
- 59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 18:32:33.49 ID:3gOQVqnF0
- もしかして仮面=
なんでもない
- 60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県):2012/10/08(月) 18:38:10.83 ID:x9e8YFqbo
- >>57
そこのウラル貼っても外部板として出てこないんだが
- 61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 18:53:37.98 ID:woPX1PbIO
- >>60
余計なものがついてるからじゃない?
ex14.vip2ch.com/news4ssnip
だけで登録しろって書いてあるだろ
- 62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県):2012/10/08(月) 19:05:43.35 ID:cWJor2YMo
- 男が理性を代償にして仮面になるんですね
- 63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 19:11:30.14 ID:0C/EHaXIO
- 頼むから先読み思いついても書かないでくれ
- 64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2012/10/08(月) 19:14:09.47 ID:v6P/Groho
- >>1乙
- 65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/10/08(月) 19:16:35.15 ID:YBDYb7k7o
- >>62
それでその通りだったらどうするんだよ
予想厨は死ね
- 66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 19:44:07.28 ID:Wc4LvhIYo
- さては>>1、落ちないから安心して寝てるな
- 67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 19:44:37.56 ID:3gOQVqnF0
- あーあ
言わないでおいたのに
- 68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 20:13:15.28 ID:jtDa3KKDO
- >>1は夢の世界を楽しんでおります
- 69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/08(月) 20:17:36.73 ID:qjEWEWnAo
- 幼女だからな
寝る子は育つって言うし
- 70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/10/08(月) 20:28:55.11 ID:RytCYS630
- 保健室読んできた
素晴らしい
- 71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 20:49:14.75 ID:0C/EHaXIO
- 保健室とメイドと娼館読んできた
もう他のしょうもないssが読めなくなるレベル
すげえ
- 72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 21:27:17.15 ID:Wc4LvhIYo
- あしたよもうかな
ねよ
- 73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2012/10/08(月) 21:43:19.02 ID:nMtdd0CI0
- ここって保守要らんの?
- 74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/10/08(月) 21:45:16.01 ID:uAbV8/fso
- 今日一日>>1の今まで書いたss探して読むだけで終わった
- 75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県):2012/10/08(月) 21:51:22.58 ID:DkXuOsTco
- >>73
保守なくても余裕
- 76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/08(月) 22:07:17.56 ID:5GVMBambo
- ローカルルール嫁
- 77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/10/08(月) 22:07:51.64 ID:+qDqozcLo
- この板の他のスレ覗いてこい
本編なしで70も進行とか異常だぞ
- 78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 22:08:57.65 ID:RgGbkqvFo
- 雑談は控えるのがマナー
- 79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 22:19:43.15 ID:nlHRpeGSO
- 読むのは明日の昼になりそうだし、流石にその頃には完結して落ちてそうだし
今のうちに>>1に言っとく
素晴らしいSSをありがと
おかげでいい三連休になった
他作品も暇見つけて読んでみるわ
- 80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 23:01:11.17 ID:V/LNk5uJ0
- まだ>>1はお休み中か
俺も先に>>1乙といっておく
- 81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/08(月) 23:15:00.12 ID:LsWPNYzbo
- はらみーの服すごく似合ってる
- 82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/08(月) 23:52:37.00 ID:SUzIWevKo
- >>1はまだお休みか・・・
- 83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/10/08(月) 23:58:10.43 ID:Nm7TQSCxo
- 明日の朝まであればいいが
- 84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/10/09(火) 00:04:21.82 ID:UQKgmrwHo
- ここはSS速報だ
一か月書き込みが無くても落ちない
無駄なレスは控えてくれ
- 85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県):2012/10/09(火) 00:05:40.60 ID:zsLg7EJDo
- ここは保守なんかしなくても2ヶ月作者の書き込みがないか
作者がhtml化依頼出さないと落ちないよ
だからお前ら落ち着け
- 86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 02:40:24.95 ID:nI6RMLJto
- 他作品も面白かった
- 87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/10/09(火) 05:40:30.59 ID:h1poflyxo
- 他の読み進めてるが寝不足になっちまったじゃないですか、どうしてくれる
- 88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 06:43:59.74 ID:GSIyCG6Oo
- 男「あの、カタギさんはここの住職なんですか?」
カタギ「いや現役は引退したよ。納骨式のときは、俺じゃなかったろ」
男「そういえば」
男「あの、このお墓って、他に誰がはいってるんです?」
彼女はここを指定したが、
墓石に彫られた名前を見ても、わからなかった。
カタギ「ああ、そうか、しらんか」
カタギ「誰だと思う?」
男「俺の知っている人です?」
カタギ「そうだな」
- 89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 06:54:10.22 ID:rgSP+E5U0
- >>88おお、来たら起きてた!!
朝早くから大変そうだけどがんばれ!!
- 90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県):2012/10/09(火) 07:30:39.42 ID:L35NTDlOo
- ほ
- 91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 07:33:09.25 ID:GSIyCG6Oo
- となるとあそこにいた誰か。
男「童ちゃんか……、芸者さんか……」
男「仮面さん……?」
カタギさんは「それじゃ全員じゃねえか」と言って笑った。
カタギ「童だよ。あいつの墓が、これだ」
男「童ちゃん……か」
カタギ「そうだ」
カタギ「アイツはとお嬢はな、少しの間らしいが一緒にすごしてたんだ」
カタギ「童が、お嬢を保護する形でな」
男「保護……?」
- 92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 07:52:31.25 ID:GSIyCG6Oo
- カタギ「逃避をした時間が、全員バラバラだっていうのは、知ってるな?」
男「はい」
カタギ「時間的には、童はお嬢よりも前に逃避していた」
カタギ「たしか、今から換算すると二十年かそこらの昔だ」
カタギ「お嬢の逃避はたしか……、六年だか、七年だか」
カタギ「ああ、向こうでの滞在時間とは関係ないぞ」
カタギ「「お前だって何年もいたのに、逃避したのは最近だろ」
男「ええ、まあ。……あれ、何で知ってますか」
カタギ「顔と背丈があの時のままだからな。髪は少し伸びたようだが」
男「なるほど」
- 93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 07:54:51.09 ID:OPVKLcLp0
- おお来てた
頑張ってな陰ながら応援している
- 94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 08:01:34.15 ID:GSIyCG6Oo
- カタギ「偶然だったらしい」
カタギ「童は、現実にもどったすぐあとのお嬢を、発見したんだ」
カタギ「ただ、あいつは向こうで視覚を失っていたからな」
カタギ「最初は顔を見てもお嬢とは気づかなかったらしい」
カタギ「ただ、その時のお嬢はとてもひどかったそうだ」
カタギ「だから気づかなくても、保護をした」
カタギ「それで一緒にいたのが、五、六年」
カタギ「死んだのは、つい半年前だ」
男「半年前……」
逃避した時が九歳で、それが二十年まえだということは。
悔しいくらい、若すぎる。
- 95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 08:35:52.97 ID:GSIyCG6Oo
- カタギ「あいつも――知っていると思うがお嬢も――ほとんど身寄りがなかったらしい」
カタギ「だから死の間際、童はなんとかお嬢に身寄りを、と思って」
カタギ「なんとか見合いの話を、取り付けた」
カタギ「それがまた偶然にも」
カタギ「お前だった、というわけだ」
男「な……」
カタギ「もちろん童のやつは、お前だとは知らなかった」
カタギ「そもそも童自身身寄りがいなかったのだから」
カタギ「頼れる人もすくなく、話を取り付けるだけでも大変だったはずだ」
カタギ「お嬢が運命の出会いだといったのも、頷けるところだな」
男「……」
- 96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 08:43:22.70 ID:GGcyq+yIO
- さむいね
- 97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 08:57:51.54 ID:GSIyCG6Oo
- 男「ああ……」
目頭が、熱くて。
カタギ「結局、童はお前とのお見合いが行われる前に逝っちまった」
カタギ「まあしかし、お前とあわせることができたのだ」
カタギ「お嬢にとって最高の相手だ」
カタギ「……本望だったろうよ」
男「……」
カタギ「あの頃。旅館でお前が話した見合いのこと」
カタギ「つまりはこれだったわけだ」
カタギ「なんの気なしに聞いていたが、こうと分かると、なんていうかな」
そこで口を閉じ、あごをかいて。
カタギ「あの旅館にいて、それぞれが知っていたからこのお見合いにつながったわけじゃない」
カタギ「本当に全て、偶然に」
虚空に投げるように。
カタギ「……不思議な話だ」
- 98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県):2012/10/09(火) 09:09:58.15 ID:J9wsGewP0
- 縺阪※縺溘シ
- 99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 09:10:42.43 ID:GSIyCG6Oo
- カタギさんはそう言ってから、空を仰いだ。
俺は、じっと墓石を眺めていた。
いつのまにか、ぽろぽろと。
なにかが、頬を伝っていた。
男「俺は……」
あふれ出るものは、とめどなく。
男「ああ」
なんといえばいいのか、分からず。
男「……」
とにかく今はもう何も出来ないという事実に。
ただただ、耐えるしかなく。
乾いた風は、つめたかった。
- 100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 09:15:36.91 ID:GSIyCG6Oo
- その時。
?「おーい」
と、女性の声。
?「あはは、なんだきてたのかあ」
どこかできいたような。けれどすこし、かわっているような。
振り返ると。
男「ああ……」
彼女はあの時見たよりも、やはり大分、年を取っていて。
カタギ「紹介しよう」
カタギさんはにやりとして。
カタギ「こいつが俺の、嫁だ」
芸者「やだなあ、もう。こんな歳になってるのに、恥ずかしいよ」
芸者さんもまた、笑って。
芸者「ひさしぶりだね、おにいさん」
男「……おひさしぶりです、芸者さん」
- 101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 09:30:58.55 ID:GSIyCG6Oo
- 男「結婚、したんですか」
カタギ「そうだ。ずいぶん前にな」
芸者「といっても三十年前くらい? 結構歳とってからだもんね、現実で会ったの」
カタギ「そうだな」
二人が出会ったのもまた、偶然だったらしい。
カタギ「会った時は、誰だか分からなかったしなお前」
芸者「ぐ、その言い方はなんかむかつくなあ」
二人はとても仲がよさそうだった。
男「そうでしたか……、おめでとうございます」
芸者「この歳になって祝福されるとはっ」
男「俺から見れば、二ヶ月前に別れたばかりですから」
その時は二人とも、他人同士。
芸者さんはカタギさんに好意があったようだったし、
だから二人にしては今更と分かっていても、
そう、言いたくなった。
- 102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 09:37:56.56 ID:GSIyCG6Oo
- その後少し会話してから、俺は帰ることとした。
カタギ「これからどうするんだ、お前」
男「……とくには、変わらず」
今までのように、普通に会社勤めを、続けるだろう。
カタギ「そうか」
カタギ「……また、こいよ」
男「……はい」
カタギ「……」
その間が、少し意を含んでいるのは、分かった。
カタギ「いつでもこいよ」
男「はい。……では」
俺は車に乗り込む。
芸者「またねー!」
芸者さんに見送られ、
俺はその場をあとにした。
- 103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 10:27:43.42 ID:GSIyCG6Oo
- 数日後の休日。
俺はある場所へとやってきた。
男「やっとみつけた……」
明け方頃に家を出たが、今はもうとうに昼をすぎていた。
彼女の残したメモの内の一つ、
押し花とかかれた住所が、ここ。
いや正確には、住所の場所には家があった。
だがそこはボロボロで、既に人はいなかった。
ならこれはどういうことか、
と途方にくれかけたが、そういえばと俺は思い出した。
>「幼い頃は私、とても田舎に住んでおりまして」
>「ええ、山の中のような。あはい、おじいちゃんとおばあちゃんの家です」
>「その頃、お山の中に一つのお墓がありまして」
>「ぽつんと。一つだけ」
>「その納骨室に、押し花の本が一冊、入っていたのです」
>「とてもふるい、お手製の」
>「中のお花はとっくに枯れていましたけど、でも私それがとても気に入って」
おそらくあの家が、幼い頃のお嬢さんが過ごした場所だ。
そしてこの押し花とかかれたメモで向かって欲しかった場所は、つまり。
男「この墓、だよな」
小一時間探し回って今やっと、それらしきものを見つけたのである。
- 104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 10:44:22.75 ID:W9w+6hVyo
- はよ
- 105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 10:49:32.43 ID:GSIyCG6Oo
- 男「やっぱり」
納骨室とおぼしき場所から、一冊の和とじの本がでてきた。
男「ずいぶんと古いなこれは」
中には既に枯れきってはいたが、
無数の花が収められていた。
男「これがお嬢さんの言っていた……」
ページを一つ一つ、
本そのものが壊れないよう注意しながら見ていく。
一通り見た後、本の表紙を良く見ると、文字が。
男「……四季、か」
なるほど、本来この本には、
四季折々の花々が、美しく閉じ込められていたのだろう。
- 106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 11:28:21.50 ID:GSIyCG6Oo
- ?「その宿が廃れていく中で」
?「一人の男が悪魔に懇願をしました」
?「宿をつづけさせてほしいと」
?「悪魔は首を横に振りました。契約は契約です」
?「その宿はすでに、悪魔のものです」
?「しかしそれでも、どんな形でもいいからと男は縋り付きました」
?「それでは、と悪魔は提案をします」
?「この現実の宿は、既に廃れることがきまっている」
?「しかし人の世でなければ、つづけさせてやってもいいだろう」
?「男はそれでもいいと頷きます」
?「ただしお前の命が代償だ」
?「宿は続くがお前は死ぬ。それでもいいか、と悪魔は続けます」
?「男はそれにも、それでもいいと頷きました」
?「男にとってこの宿は、命よりも大切だったのです」
- 107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 11:34:39.54 ID:GSIyCG6Oo
- 振り向くと、そこにいたのは。
男「支配人……!」
支配人「おひさしぶりです、お客さん」
男「な、なんで、ここに」
支配人「いえむしろ、貴方の方からここにきたのですよ」
支配人「ここが、私どもの旅館の場所ですから」
男「え……?」
支配人「その墓は、ここにあった宿を営んでいた家の墓です」
支配人は、目線を俺の持っていた本に落とし、
支配人「そしてその本を作ったのは、最後の一人の男」
支配人「悪魔に懇願をし、命をささげ現実を逃避した男」
支配人「すなわち、私どもの館を、作った男にございます」
- 108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 11:45:12.06 ID:co7i3xfGo
- まだか
- 109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 11:46:38.94 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「ゆえにあの旅館には四季の間がございます」
支配人「なぜなら彼が、ここに閉じ込めたから」
支配人「ゆえにあの旅館には現実を逃避した人間が招かれます」
支配人「なぜなら現実を逃避して出来たのが、あの場所だから」
ああそうか。
だからあの屋根から見た景色は、
>支配人「ここから見えるこの風景は」
>支配人「その宿が廃れるまさに寸前で、時間が止まっているのです」
時が止まっていたのだ。
男「……そういう、ことか」
- 110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 11:54:39.61 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「どうです、戻った現実は」
男「……どうもなにも」
支配人「左様で」
俺は何も言わなかったが、支配人は察した様子。
支配人「しかし皆さん頑張って現実を乗り越えたのです」
支配人「きっと貴方も」
男「……、失ったものは、帰ってこない」
支配人「それは誰しも同じですが」
男「それは……」
言葉に、詰まる。
- 111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 12:15:44.77 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「……それでは、彼らの話をいたしましょう」
男「え?」
支配人「彼らの、逃避した理由を」
支配人「貴方と同じく、彼らだって逃避した現実がありました」
支配人「彼らはそれを、逃避から戻ったのち、乗り越えたのです」
それはそのとおり。
あの場所にいたということは、
同じく逃避したい現実があったのだ。
男「……」
では、と支配人は語りだした。
- 112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2012/10/09(火) 12:16:41.02 ID:9MpZsE65o
- バンバンバンバン
- 113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 12:41:22.42 ID:TvmngTfIO
- はよ!はよ!
- 114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 13:09:28.43 ID:GSIyCG6Oo
- すまん途中だが、
ちょっと出かけなきゃいけない時間になったからいってくる
6時過ぎごろ再開できるとおもう
- 115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 13:11:24.58 ID:MgFeqZlno
- 乙いってら
- 116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 13:14:02.60 ID:OTkst15IO
- いってら
- 117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 13:14:13.43 ID:2ymcQAxDO
- >>1乙
待ってます
- 118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/09(火) 13:14:18.47 ID:Lo+fRHf7o
- 気をつけて 待ってる
- 119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 13:14:25.82 ID:2ymcQAxDO
- >>1乙
楽しみに待ってます
- 120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/10/09(火) 15:40:02.08 ID:qQV6LhKk0
- おせえんだよかす
つまんねえのにだらだらつづけんな
- 121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 16:01:00.29 ID:4NNW7/R4o
- だまれかす(´・_・`)
- 122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 16:45:14.16 ID:En4X+ZU+o
- (・_・;
- 123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 17:53:35.15 ID:HccPa8DQo
- そろそろか
- 124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県):2012/10/09(火) 17:58:08.79 ID:s0wkL36xo
- しねかす(´・ω・`)
- 125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 18:22:05.70 ID:bimKq0Fqo
- 追いついた期待
- 126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 18:28:45.38 ID:ku45IscIO
- それにしても保健室の出来すげーな
- 127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2012/10/09(火) 19:10:27.43 ID:ffG26gX7o
- 保健室は傑作だよね
- 128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 19:45:59.17 ID:GSIyCG6Oo
- それはどれも、優劣のつけられるものでは、なく。
ぐるぐると、言葉だけが、回る。
跡目。抗争。報復。巻き添え。両親。寺。焼き討ち。仁義。復讐。
戒め。痛覚。ケジメ不可。否定。
カタギ。家。父の跡。復興。
性欲。貞操。制御不可。真面目。二律背反。恋。娼婦。
妻帯者。崩壊。優しさ。
謝罪。尽力。解決。抑制。コントロール。
両親。愛人。知らない男。知らない女。家の中。オトナ。
怒声。恐怖。見ない。放置。暴力。孤独。
逃亡。自活。労苦。奮闘。
父。溺愛。肌。エスカレート。男。寵愛。拘束。接触。身体。
生暖かさ。嫌悪。体温。
拒否。逃亡。努力。回復。笑顔。
ぐるぐると、回る。
- 129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 19:55:58.99 ID:Y8o/MtsLo
- きたー
- 130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 20:02:36.79 ID:GSIyCG6Oo
- 男「……」
自分ばかり、などということは、なく。
男「……っ」
分かっている、分かっている。
話を聞いて、さらに強く、理解している。
男「……」
それでも思わずにはいられない。
だからなんだと、いうのだ。
誰がなんだというのだ。
現実は、いくら乗り越えようと、
事実として、変わらない。
- 131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 20:10:33.97 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「……気持ちは分からないとはいいませんがね」
支配人「それに彼らには、戻るまでに考える時間があった」
支配人「……しかし貴方には、なかった」
支配人「なぜなら全て、忘れていたから」
支配人「その点確かに、異なりはしますか」
しかしその程度。
男「俺は何も……してやれなかったんだ」
現実を逃避した時点ですでに、
俺はもう、何も出来ない状態、だったのだ。
時間がいくら、あったところで。
支配人「あの場は解決を求める場ではなく」
支配人「心の準備を、する場所、ですから」
支配人「だから本心から望まなければ、帰ることはできないのです」
- 132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 20:19:55.79 ID:GSIyCG6Oo
- 男「いくら準備をしたところで……!」
男「こんなにも辛い現実なら、俺はいつまでだって、あそこに……!」
ああ。
それはきっと、あの場にいた誰もが思っていたこと。
支配人「時間は人の心を変化させます」
支配人「どんなに辛いことも、いずれは耐えうるものとなる」
男「だからなんだ……」
男「俺は彼女に何もしてやれなかった!」
男「俺の言葉を信じてくれた彼女に」
男「俺は一生どころか、たった十日も尽くしてやれなかった!!」
男「ただ一言答えてやること、すらも……」
それはどうしたって、変わらない。
悔しくて。
それがたまらなく、悔しくて。
- 133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 20:35:49.35 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「そこまで、おっしゃいますか」
支配人は、くつくつと喉を鳴らして笑う。
支配人「……では、もし」
支配人「たった一瞬でもそれができる、と言ったら」
男「……、……、……え」
支配人「貴方の言葉は、よく覚えております」
>男「もし俺を好きになってくれる人がいたら」
>男「俺はその人のために全力で一生をかけられるかな、って」
支配人「貴方がもしも本当に」
支配人「彼女のために一生をかけられるというのなら」
支配人「貴方の言葉が本当だというのなら」
>支配人「いや見てみたいものですね」
>支配人「人は本当に、他の誰かに一生をかけられるのか」
支配人「私は、見てみたい」
- 134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 20:44:34.45 ID:y17I7YTLo
- 待ってたよ
- 135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 20:50:42.63 ID:GSIyCG6Oo
- 男「……本当に……、できるのか……」
支配人「貴方が一生をかけられるのなら」
支配人「ほんの一瞬だけ、そのチャンスを与えましょう」
男「……」
一生をかける。
その言葉が意味するところを俺は捉えられなかったが。
しかし、もし彼女のために何か出来るのなら。
男「それでもいい、一瞬でいい」
男「できることがあるのなら、俺は一生だって」
支配人「一生という言葉の重み」
支配人「……分かっておりますか?」
そんなもの、まだ一生を生きたことのない人間に、
分かるはずもない。
男「……それでも、何か、できるなら」
支配人は、どこか怪しく唇をゆがめる。
- 136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 21:01:33.30 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「わかりました」
支配人「貴方を、過去の旅館にお送りいたしましょう」
支配人「こちらの時間と、あちらの時間は、全くの別物」
支配人「こちらから見れば、あちらの時間は止まっておりますが」
支配人「あちらにはあちらの、時間がある」
支配人「その、過去へ」
男「……」
……そういう、ことか。
支配人「これは悪魔の契約です」
支配人「貴方の一生を代償に、貴方の望んだ一瞬を、差し上げましょう」
男「そんなとこだろうと思った」
男「……いいだろう」
支配人「ふ、それでは」
支配人は手を差し出した。
俺はその手を、たしかに握る。
支配人「契約、成立です」
- 137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 21:12:23.81 ID:/jqrDeDmo
- おいおい
- 138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/10/09(火) 21:15:52.76 ID:SFgbzNupo
- それでいいのか・・・?
- 139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/09(火) 21:19:49.55 ID:6pvLb1Kj0
- 仮面さん・・・
愛していたってそういうことか・・・
- 140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/09(火) 21:21:28.16 ID:6pvLb1Kj0
- 気づいたよ もか
- 141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 21:24:06.55 ID:Y8o/MtsLo
- こうしてメイドさんに一生ができたのか・・・
- 142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 21:26:42.45 ID:YNKzfGafo
- つまり男がナニを代償にメイドさんになる……ゴクリ
- 143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北):2012/10/09(火) 21:27:09.99 ID:MvgSWTyAO
- 分かる部分だし言いたくなるのは分かるが
やめないか、そういうの
いつもの『Fin』の後にしようよ
- 144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 21:31:45.35 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「それでは、貴方の一生は預かりました」
支配人「これより貴方を過去へお送りいたします」
支配人「細かい裁量は過去の私に任せましょう」
男「……わかった」
支配人「怖くはありませんか」
男「……怖いさ、なんたって悪魔の契約だ」
男「怖くないわけない」
身体が全く、落ち着かない。
手だって、震えていた。
男「でも、やるしかない」
支配人「……そうですか」
支配人「気持ちは固まっているようですね」
支配人は、そこで俺の目を真正面から見る。
支配人「それでは過去に行く前に」
支配人「貴方は一つ手順を踏まねばなりません」
支配人「お教えしますので、ぜひ、ご自分で」
- 145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 21:46:43.89 ID:GSIyCG6Oo
- 男「ここは……」
俺は霧に包まれていた。
支配人「どうも、はじめまして」
すっと、先ほどまで見ていた男――支配人が浮かぶ。
男「はじめまして……?」
支配人「ああ、貴方にとっては、過去の私ですから」
支配人「ここは、旅館に招く前の場所です」
支配人「出入り口みたいなものです」
男「……なるほど」
支配人「未来の私と契約をしたそうですね」
支配人「どれ、ちょっと契約を確認させていただきます」
支配人は、俺の手をつかんだ。
支配人「……ふむ、なるほど」
支配人「これはまた、とっぴな契約ですな」
- 146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 21:57:38.94 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「本来ここで、お客さんには対価を選択していただくのですが」
支配人「この契約では、申し訳ありませんが、貴方に選択の権利はなさそうです」
男「……そうか」
もとより、そう自由の利くことではないとわかっている。
既に俺は、契約した悪魔の言うことに従うしかない。
支配人「まず第一に、貴方がその一瞬にたどりつくまで」
支配人「つまり一生をかけきるまで」
支配人「その行為が出来ないようにしなければなりません」
支配人「まずは一つ。貴方から思考能力の全てを頂戴いたします」
男「……、……そうか」
支配人「発声機能と聴覚も、あると困りますね」
支配人「コミュニケーションが取れてしまう可能性がある」
支配人「ではその二つも、頂戴いたしましょう」
- 147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/10/09(火) 21:59:01.00 ID:OLGtZFeao
- そういうことか…
- 148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/10/09(火) 21:59:44.75 ID:R9iSTJhLo
- 切ないなぁ
- 149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 22:00:11.23 ID:HccPa8DQo
- そこまでしてか…
- 150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 22:06:47.82 ID:WxEu5gHu0
- oh…
謎が紐解かれていく
- 151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 22:13:25.73 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「記憶は……、頂くわけにはいきませんね」
支配人「でないと、貴方が一生をかけたと認識できず」
支配人「それでは貴方が一生をかけたことに、ならない」
支配人「……少々、むごいですが」
男「むごい?」
支配人「……そのときになれば、わかるかと」
支配人「ああそうだ、顔も隠さなければなりませんね」
支配人「誰だか分かってしまってもアウトだ」
支配人は、どこから出したか、
支配人「どうぞ、この仮面をつけてください。さすがにのっぺらぼうにするのは忍びない」
差し出された仮面を、俺は受け取って、
顔に、つける。
男「……あまり、いい気分ではないな」
支配人「いずれ慣れるでしょう」
支配人「その仮面は、役目を終えるまで」
支配人「もう貴方からは離れません」
- 152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 22:14:19.16 ID:m3xV48suo
- うわあ…
- 153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県):2012/10/09(火) 22:19:57.82 ID:m8UjSaqNo
- ああ…
- 154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 22:20:51.11 ID:snp19X/oo
- これも娼館と繋がるのか?
女神達は見てるのか?
- 155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/09(火) 22:21:43.66 ID:2TMkCg6Do
- VIPじゃないんだから感想は最後にしろよ
- 156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 22:22:16.85 ID:BOAyaVtyo
- 仮面との初遭遇後にカタギとした会話を読み返したらますます
- 157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/09(火) 22:29:43.43 ID:y17I7YTLo
- なんてこった…
- 158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 22:43:25.08 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「さて、このあたりでしょうかね」
男「……そうか」
支配人「何か質問は、ございますか」
今更何もないなと思ったが、ここで何も聞かないというのも勿体無い。
男「風呂はどうする」
支配人「ははは、なるほど」
支配人「大丈夫です。この場所では、時間が動きません」
支配人「何日風呂に入らなかろうが、現時点を維持しまから」
支配人「におったり汚くなったりはしませんよ」
男「ああ……」
>男「俺、へんなにおいしてないか……?」
>メイド「へんなにおい?」
>メイド「してる?」
>メイド「雄のにおいすらしない」
>メイド「さかってない」
>メイド「結論は?」
>メイド「「「しない!!!」」」
>男「うーん……、あてにしていいのかこれ」
こんなところで、メイドさんの正直さが証明されたか。
- 159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 23:01:52.80 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「一応、注意だけ」
支配人「貴方は一生をかけました」
支配人「ですから、貴方が途中で自殺を図ろうとしても」
支配人「決して死ぬことはできません」
男「思考ができないなら、そんなことにはならないのでは」
支配人「残念ながら記憶と本能がのこっています」
支配人「気が狂う可能性は十分にあり」
支配人「であれば自殺につながることも、まったくもってないとは言えません」
男「……そうか」
背筋に嫌な寒気が、走った。
支配人「貴方はおそらく、一生をかけきった時点でぴったり契約を履行できるように」
支配人「時間が調整されている」
支配人「悪魔はその辺り、キチっとしてます」
男「……そうか」
- 160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 23:13:35.39 ID:GSIyCG6Oo
- 支配人「それでは、そろそろ」
男「ああ」
また浮かび上がるように、
扉が現れた。
支配人「ここに入れば、貴方の時間が始まります」
支配人「これからの一生の、時間です」
男「……ああ」
支配人「貴方の一生がどの程度か知りませんが」
支配人「人一人分の一生は、ながくとも百年かそこらでしょう」
支配人「それを、耐えれば」
男「……途方もなくて、よく分からないよ」
支配人「……そうですね」
男「それじゃあ、行ってくる」
俺はそうしてその扉をひらき。
中へと、入っていった。
- 161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/10/09(火) 23:17:28.46 ID:TxpvWuRb0
- あぁ…
- 162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 23:17:41.23 ID:GSIyCG6Oo
- 後ろでパタンと扉がしまった。
そこは、長い長い廊下だった。
男「ここは……」
俺はここがどこかを理解すると同時に、
男「……!?」
ゆっくりと。
ぼろぼろと。
大切な何かが、自分からこぼれ落ちていくのを感じた。
男「あ……っ、――!」
最初に声が、出なくなった。
男「――」
次に、だんだんと音が聞こえなくなっていった。
すうっと、音そのものが身体から抜け出ていくような。
長い廊下は、シンとした。
男「――」
そして頭の中に今度は靄がかかりだし。
最後に俺は、
考えることを失った。
- 163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 23:23:42.31 ID:GSIyCG6Oo
- 最初の一日は、ただ廊下に突っ立っていたと記憶している。
男「――」
恐ろしく長い廊下を、ただ見つめて。
自分が何故ここいるのか、分かっているような、わかっていないような。
時間がとても、長く感じられた。
二日目からは、歩き出した。
長い長い廊下を、ふらりふらりと行ったりきたり。
男「――」
何がおこるわけでも、誰がくるわけでもなく。
ただ延々とつづく廊下を、歩くだけ。
男「――」
時間はとても、長く感じられた。
- 164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/09(火) 23:27:41.36 ID:csYbsHwp0
- そっちか
てっきり宿から出さなければおぜうは生き続けるからとかかと
- 165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 23:30:28.05 ID:GSIyCG6Oo
- それが三日、四日、五日とつづいて、一週間も経った頃には。
男「――」
俺はその行為に、飽きた。
いや飽きるというよりも、それ自体がストレスになり始めた。
廊下の向こうへ行ってみようともしたが、
なぜかT字路のところより先には行っていけないような気がした。
男「――」
だから俺は、延々と廊下、行ったりきたり。
時間はとても、長く感じられた。
- 166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 23:38:43.78 ID:GSIyCG6Oo
- 二週間がたったころ、偶然T字路を通りかかった人間を見つけた。
記憶にはない人間の男だった。
彼は俺を見て立ち止まっていたので、
近づいてみた。
男「――」
しかし男は、怯えた表情で駆け出した。
よく分からなかった。
その何日か後にも、女性を見かけた。
これも記憶にはない人間だった。
男「――」
やはり彼女も、逃げ出した。
よく分からなかった。
それからさらに数日後に、今度はメイドさんをみかけた。
男「――」
メイド「あどうもー」
メイドさんは挨拶をしてくれた。
嬉しいと感じた。
- 167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 23:43:08.64 ID:GSIyCG6Oo
- その日、支配人がやってきた。
支配人「どうも」
男「――」
支配人「さすがに辛く思ったので」
支配人「せめて私と、メイドさんたちの声は聞こえるようにしておきました」
何を言っているのかわからなかった。
支配人「……」
支配人「それでは」
男「――」
俺はまた廊下を歩き出した。
- 168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県):2012/10/09(火) 23:53:40.57 ID:FcQc77tyo
- 切ないな
- 169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/09(火) 23:56:09.78 ID:GSIyCG6Oo
- 延々と廊下を歩き続け、座ってみたり、壁を眺めてみたり。
一月、二月、三月と経って、ようやく半年が過ぎた。
もちろん日数など数えていなかったので、
支配人が教えてくれたものを記憶しただけである。
男「――」
この旅館にいる人間は、
今のところ全員記憶にない人たちだった。
今日もまた、いったりきたり。
明日もまた、いったりきたり。
延々と、延々と、延々と、延々と。
朝も、昼も、夜も。
時間など大して分からないまま、もう一度、もう一度、もう一度。
男「――」
今日も。
今日も。
今日も。
今日も。
今日も。
今日も。
今日も。
今日も。
今日も。
今日も。
今日も。
- 170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 00:06:08.81 ID:F106sh6go
- 一年が経ったとき、俺はとても達成感を感じた。
しかしそれもすぐに消えた。
まだ最初の一年が過ぎただけだと分かったからだった。
男「――」
言い知れない感情が芽生えた。
怒りのような、憎しみのような。
俺はある時通りがかった人間に、飛びついていた。
押し倒し、こぶしを振るっていた。
しかしそこにやってきた別の男に蹴り飛ばされた。
俺は二人の男と戦って、
体中を負傷し、動けなくなった。
俺は二日ほど、そのまま寝転んでいた。
それからしばらく、ここに人はよりつかなくなった。
- 171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 00:15:12.67 ID:F106sh6go
- ある時から、俺にはメイドさんがあてがわれるようになった。
何が原因だったかは分からない。
もしかしたら客の女に何か手を出していたかもしれない。
男「――」
メイド「い、いやですよお、お客さん」
メイド「あいた、いたた、乱暴にしないで」
メイド「もうちょっとやさしく」
男「――」
メイド「私たち性感機能ないんで、いたいだけなんですよ」
ただそれは退屈な毎日に、一瞬でも楽しいと思わせるもので。
メイド「ああもう、いまおわったばっかりでしょう」
男「――」
メイド「わかったわかりました、そんなしなくても、逃げませんってば」
しばらく俺は、それを頻繁に、つづけた。
- 172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/10(水) 00:17:07.82 ID:D/crA671o
- 痛いのならもうカタギさんは居るのかな
いや別人の対価か
- 173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 00:29:00.67 ID:F106sh6go
- 二年がたち、三年がたち、やっと五年がたった。
先の見えない、とても長い時間だった。
楽しみといえば、
毎日とっかえひっかえメイドさんであそぶこと。
とはいえ最初はサルのようだったものの、
最近では、そんなに目新しい感じもなくなってきて、
正直面白みはへっていた。
男「――」
ある日唐突にそれに飽きた。
俺はまた、行ったりきたりを繰り返す。
自分が何をしているかわからなかった。
分からないことがストレスだった。
しかし考えようにも何も考えられなかった。
分からず壁に頭を打ち付けてみたりした。
男「―-」
分からなかった。
- 174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/10(水) 00:32:55.01 ID:b8Xhx6A4o
- 毎日メイドさんとヤリまくりか
- 175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2012/10/10(水) 00:36:24.31 ID:u2wvrEJC0
- まだー?
- 176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 00:36:55.92 ID:F106sh6go
- 十年がたったころ、俺はもう、おかしくなっていた。
ある日あまりの退屈さに、
だんだんと頭をたたいたり、
変な方向に身体をまげてみたりした。
腕で強く壁を殴ると、間接が一つふえた。
痛かった。
調子にのって、そこをぐりぐりとやってみると
紅いものがでてきた。
ぼたぼたと。
男「――」
気がちがっていた。
いやもうそんなものも忘れたようだった。
男「――」
数日後には直っているその腕を見て、
嫌悪感を覚えた。
またどたばたと、身体を打ちつけた。
- 177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 00:46:27.22 ID:F106sh6go
- 二十年が過ぎた頃、俺はもう動かなかった。
まだ気の違ったように動いていた方がマシだったような気もする。
これだけたつと、旅館の客はほぼ入れ替わっていた。
彼らは十年やそこらで大体帰る。
もちろん長く居座る人も、逆にすぐに帰る人も、いたが。
メイドさんの機能も、付いたり消えたり色々変わった。
何年かに一度のその変化を確認するのは、
そこそこに興味があった。
男「――」
時間はとてもながかった。
まだ、まだ、ずっと、先。
- 178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 00:48:37.97 ID:F106sh6go
- それからの日々は、何も変わらない。
時々メイドさんと遊んでみたり。
時々自殺を図ろうとしてみたり。
時々制御不能で客に手をだしてしまったり。
でも基本的には
ずっと廊下を歩くか、座ってじっと壁を見ているか。
ここのしみの数すら、概ね覚えたような気がする。
三十年。四十年。五十年。
まだ、まだ、まだ。
- 179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 00:52:24.87 ID:F106sh6go
- 六十年だか、七十年だか、もう支配人の言葉もまともに記憶していなかったが、
とにかくそれくらいがすぎたころ。
男「――」
記憶にある人間が、やっとやってきた。
童「――」
彼女はこちらを見るのだが、
その目は俺をまったくうつしていない。
男「――」
口だってひらかなかった。
男「――」
でも何故か、うれしかった。
- 180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 00:58:36.90 ID:F106sh6go
- 童ちゃんがきて、十三年後。
さらにもう一人、見知った人間がやってきた。
カタギ「――」
とても冷たい目をしていた。
男「――」
もちろん意思疎通などできないし、
それをしようなどとも考え付かなかった。
ただ知っている人間がいるな、と思っただけ。
頭の中は、もうほとんどからっぽだった。
何も思ってすらいない。
俺は今日も延々と、廊下を歩き続ける。
ひたすらに。
ただひたすらに。
- 181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:04:52.24 ID:F106sh6go
- そうして。
拷問のような、生き地獄のような、そんな数十年を経て。
長い長い、長すぎる時間を経て。
気を違えながら、何をしているのかもわからないまま。
男「――」
男「――」
俺はついに、俺自身と、対面した。
俺はいつのまにか記憶というものすら薄れさせてしまっていたから、
最初は何か分からなかった。
とはいえ気づいた後も、俺は別段かわることはなかった。
なにせ何も考えられない。
俺がいる、という認識をしただけだった。
- 182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 01:06:50.91 ID:/SFqIsl2o
- うむ
- 183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2012/10/10(水) 01:08:13.44 ID:nfgRm+wco
- 色々と、うん…
- 184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:08:37.82 ID:F106sh6go
- しかし俺は、俺の元へとなんどもやってきた。
最初はとても短い間隔だった。
男「――」
俺は本能的に、廊下を進もうとする俺を、跳ね返した。
男「――」
気力もなにもとうになかったが、
これだけはやらなければとおもった。
どうしてかはわからなかった。
とにかく通してはいけない気がした。
男「――」
俺は色々と叫んだりわめいたりするのだが、
何を言っているかはわからなかった。
- 185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 01:11:43.35 ID:ihfyjhOr0
- 10日に一回か……
- 186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:12:56.36 ID:F106sh6go
- そして。
やっと。
お嬢さん「――」
お嬢さんがやってきた。
俺が着てから一年くらいだったとおもう。
俺は今までで最高に嬉しかった。
しかし、どうして嬉しいかはわからなかった。
お嬢さんはすぐに立ち去った。
それから何年かは、時々やってくる俺との戦いだった。
ただ、戦っているというつもりはなかった。
通してはいけないと思っていただけで。
男「――」
次第に頻度は、すくなくなっていった。
- 187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:20:46.84 ID:F106sh6go
- ある日。
男「――」
お嬢さん「――」
二人が同時にやってきた。
俺は本能的に、立ちふさがった。
何かしなきゃいけないような気がしたが、
わからなかった。
男「――」
わめいているが、聞こえない。
聞こえたところで、思考できないのだから大して意味はないのだが。
お嬢さんと俺は、二手に分かれたりして突破しようとした。
しかし突破させるわけにはいかなかった。
なぜ?
わからない。
強引に突破しようとした俺を、
俺はちからづくでねじ伏せた。
俺は俺に、ナニヲしているのだろう。
そもそも俺は、……何故ここにいるのダろう。
何も分からなかった。
- 188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:28:54.18 ID:F106sh6go
- またしばらくは、こなかった。
芸者「――」
記憶にあったような顔が、また増えた。
男「――」
引き続き、俺はこの廊下を歩いていた。
それから数年、ほぼ何もなかった。
たまに廊下の先が何故か行き止まりになってたりするくらいが、
変化だったろうか。
じっと、じっと、ただ、俺は壁を眺め続けていた。
そして、その日。
- 189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:32:12.96 ID:F106sh6go
- 男「――」
また、俺とお嬢さんが二人でやってきた。
俺はまた立ちふさがった。
行かせるわけにはいかない。
男「――」
俺は近づいてきた俺を突き返す。
また二手に分かれた。同じ事をやっていたような。
俺はすぐにお嬢さんを追った。
行かせるわけにはいかない。
俺がすがり付いてきたが、どうでもよかった。
意外と、粘り強い。
だが、大したことはない。
そのときだった。
カタギ「――」
いつもと展開が、違った。
- 190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:34:24.60 ID:F106sh6go
- 蹴り飛ばされたのか、転がっていた。
俺はすぐに立ち上がったが、
カタギ「――」
銃口を向けられていた。
反射的に、危機感を感じて一瞬うごけない。
その間に、カタギさんはなにかしゃべっていた。
男「――」
俺が、逃げ出した。
お嬢さんの元へ。
まって。
いかないで。
男「――」
カタギ「――」
カタギ「――」
なにか、破裂したような。
腕が、いたい。
イタイ。
- 191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:41:00.07 ID:F106sh6go
- お嬢さんと俺は、二人で走り出していた。
俺は胸の奥から吹き経つ、
まるでマグマのような荒く、烈しい焦燥感に駆られた。
男「――」
いかないデ。
カタギ「――」
マッて。
しかしカタギさんに組み伏せられた。
俺は死んでもいいという思いで、体中を振り回した。
彼らを行かせてはならなかった。
絶対に行かせてはならなかった。
何故か行かせてしまったら、
俺が受けつづけた拷問は、
全て意味がなくなると、思った。
腕は引きちぎれていいと、身体がどうなってもいいと、
死に物狂い。
まっテ。
まっテ。
- 192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:48:15.21 ID:F106sh6go
- 死力を尽くし、俺はカタギさんからどうにか脱出した。
片腕は既におかしな方向に折れ曲がっていたが、
そんなこと気にもせず。
マって。
追いかけた。
全速力で。
あらんかぎりの力で。
カタギ「――」
マッテ。
男「――」
限界などとうに超えて、
体力など気にもせず、
筋肉が壊れるほどに、足で床をたたいて、
わきめもふらず、まっしぐらに。
カタギ「――」
そして、追いついた。
俺は、すぐさま飛び掛る。
一瞬見えた、お嬢さんの怯えた顔など
なにも気にせず。
- 193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 01:55:32.81 ID:F106sh6go
- 俺は俺に飛びついたが、
向こうの俺もまた、必死だった。
取っ組み合いをするうちに、
すぐにカタギさんに蹴飛ばされた。
男「――」
痛みはあったが俺はそれでも、
立ち向かおうと。
カタギ「――」
――ッ!!!
足に、激痛。
血が、どくどくと。
既に腕からの大量の出欠と合わさり、
視界がブレた。
足を動かそうとしても、うごかなかった。
まって。
マダなの。マダなの。
マダ、なにモ、でキてないノ……。
身体が一瞬、動かなくなった。
- 194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 02:00:20.91 ID:F106sh6go
- 死ぬと、感じたその時だった。
脳が、少しずつ、クリアに。
男(あれ……?)
思考能力が、少しずつ、復活し。
男(こ……れは……)
すぐに状況を、理解する。
俺は今まさに、死に体の。
ああ、ああ。
男(あの時の……)
ああああ……。
男(くそ……、くそ……)
俺は何とかまだ動く左腕で、力の限り身体を這わせた。
男(いましか……いましか……)
カタギ「こいつ……」
カタギ「いかせねえぞ」
だん、と俺の腕はカタギさんに踏みつけられた。
- 195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 02:05:33.76 ID:F106sh6go
- カタギ「なんでこいつ、こんなに必死なんだ……」
お嬢さん。お嬢さん。お嬢さん。
男「……あぁあ……、ああ」
男(声……が……)
うめき声しか、でない。
男(たのむ……でてくれ……)
男(お願いだから……!!)
男(たのむ……!!!)
男「ぉ……で、も……」
何十年も、もう百年近くもの間。
封印されていた、この、言葉。
仮面「あい、し……で」
コレだけを言うために。
仮面「……いだ……」
ああ、いまやっと
言えた……。
- 196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 02:13:43.02 ID:F106sh6go
- すっと、あっけなく消えていく意識の中で。
俺は最後まで、お嬢さんを、見つめていた。
伝わって、伝わって。
目が、閉じる。
身体が、動かなくなる。
カタギ「なんて言った?」
男「……いえ、俺も……」
お嬢さん「……、……」
けれど俺は、このとき、意識の全てが消える寸前で、気づいた。
>一つは、「気付いたよ」と書かれたメモ。意味は不明。
ああ。
彼女は。
気づいて、くれたんだ……。
ああ。
よか、った……。
- 197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 02:17:29.50 ID:/ROhDmGQo
- ダウナー感やばいって
- 198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 02:22:37.30 ID:F106sh6go
- 男とお嬢さんの二人が去り、
全てが終わったこの場所で、
動かなくなった仮面の男と、
息を付いて座り込んだカタギさんが、残っていた。
カタギ「支配人……」
支配人「どうも」
支配人「お疲れのご様子で」
カタギ「けっ」
私は肩をすくめる。
カタギ「こいつは、死んだのか」
支配人「ええ、どうみても生きているようには見えませんが」
カタギ「……そうだが」
カタギ「しかし、俺は知っているぞ」
カタギ「この場なら、大きなキズだって、寝てれば直る」
カタギ「時間が止まってるから、身体は元の状態にもどるんだ」
支配人「そうですね」
カタギ「死には、至らないんだろう」
- 199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 02:30:44.81 ID:F106sh6go
- そのとおり。
たしかにこの場所では、逃避した時点の身体を、維持しようとする。
支配人「基本的には、そうですね」
支配人「しかし、そうでない場合もある」
カタギ「そうでない場合……?」
支配人「はい、簡単な話です」
支配人「……逃避者が、すでに、現実で死んでいる場合」
カタギ「……」
支配人「現実逃避をする際、死んでいることから逃避する方もいらっしゃいます」
支配人「そういったかたがたは、一応は時間を与えるために」
支配人「ここに死の寸前の身体で招待いたしますが」
支配人「ここで死ねば、それまでです」
カタギ「そいつも、そうだって言うのかよ」
支配人「……」
支配人「……はい。この方は既に、現実世界において、死亡しております」
- 200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 02:42:39.41 ID:F106sh6go
- 支配人「しかし彼は、自らの死の現実を逃避したのでありません」
支配人「むしろ、現実逃避をするために、死を選んだ」
支配人「もっと正確に言うのなら」
支配人「ここで死ぬために、現実世界でも、死んだ」
カタギ「……どういう」
支配人「……いえ、お気になさらず」
カタギ「……」
支配人「この死体は、私が預からせていただきます」
支配人「カタギさんは、ここからご自分でお部屋に戻れますか?」
カタギ「……ふん」
支配人「ふふ、帰れそうですね」
支配人「……それでは」
- 201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 02:56:30.22 ID:F106sh6go
- 私は自室に、彼をつれてきた。
静かに、寝かせる。
支配人「おつかれさまでした」
その顔を一生の間かくしていた仮面を、
とる。
支配人「……良い顔でいらっしゃる」
とても晴れた、大往生の顔で、彼は死んでいた。
支配人「しかと、見届けましたよ」
彼は一生をささげ、悪魔の契約をやりとげ、
最後の一瞬の報酬を、自ら掴み取った。
支配人「ああ、すばらしい」
支配人「他人のために、自分の一生を」
支配人「本当にかけられる人間が、いるとは……」
素直に、心より。
支配人「感服の至りで、ございます」
- 202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県):2012/10/10(水) 02:57:24.86 ID:J00jLy4so
- これってループしないの?
- 203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 03:11:04.13 ID:F106sh6go
- 私から見れば、
きっとこの後、さきほど出て行ったほうの彼が、
またここを現実世界で訪れるであろうから、
それを過去に送るという仕事が残っているけれども。
支配人「この彼にとっては……」
ここが物語の、終着点。
この旅館で気づいたところから始まる十日間の呪縛と
それを抜けてたどり着いた現実と、
またそれをどうにかしようと奮起した彼の、
長い長い、物語。
支配人「ああ……」
私はその顔に、人の心の、強い、強い何かを、感じた。
支配人「なんと……」
私は感動に打ち震えていた。
ただあの一瞬を勝ち取るための、
その強い意思の輝きは、
きっと誰もが持つものなどでは、なく。
- 204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 03:32:32.10 ID:F106sh6go
- そして私は、思った。
支配人「あれだけ頑張って、……これだけの報酬では……、つりあわない」
しかし、契約は契約。
一生に対して、あの一瞬。
彼は一生をここで終えることで、あの一瞬をつかんだ。
そしてそのために、
支配人「おやおや」
>支配人「それでは過去に行く前に」
>支配人「貴方は一つ手順を踏まねばなりません」
>支配人「お教えしますので、ぜひ、ご自分で」
彼はこれで、自分を殺した。
現実で死んでいなければ、この世界で死ねないから。
しかし。
支配人「おやおやおやおや、つりあいませんねえ」
彼がささげたのは、一生である。
支配人「この旅館で一生をささげ、そして現実の世界で、あるはずだった未来の人生も、殺している」
支配人「おやおやおや、おやおやおやおや! 一つの報酬に、二つも代償をささげておられるとは!」
支配人「こりゃあ、大変だ」
- 205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/10(水) 03:33:44.50 ID:D/crA671o
- このわざとらしい支配人!
- 206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 03:42:27.99 ID:fH4rjZ++o
- そうきたか
- 207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 03:42:51.90 ID:k3rtBk9/o
- 憎いねぇこの支配人
- 208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 03:43:05.89 ID:F106sh6go
- 私はくつくつと、わらった。
支配人「等価交換ではないじゃないですか」
支配人「これでは悪魔の名に泥がついてしまいますねえ」
支配人「さてどうしたものか」
これは自分でもひどい屁理屈だと、内心で笑いながら。
支配人「……なに、戯れです」
支配人「悪魔の戯れです」
支配人「その勇姿を見せてくださった貴方への」
支配人「私からの、ちょっとした悪戯です」
支配人「ふふ」
支配人「そしてこれは」
支配人「貴方への、正当な対価」
さあどうぞ、胸を張って。
お受け取りください。
- 209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 03:57:53.34 ID:F106sh6go
- 朝の、少し早い時間。その日俺は仕事に行く途中であった。
?「現実逃避、しませんか?」
男「……は?」
唐突に、肩をたたかれた。
振り返ると、うさんくさいスーツの男が、一人。
?「お金や時間、才能や人間関係、何でもいいのです」
?「それら気の疲れる現実から、さらっと逃避などしませんか」
男「……新手の宗教かなにかか」
?「どうです? 現実逃避、してみませんか」
男「……はあ。いい、しないよ現実逃避なんて」
?「おやそれはどうして」
男「充実してるから」
?「ほう、それはまた」
?「……なるほど、素晴らしいことです。では私は、不要でしたね」
男「そうだ。帰った帰った」
俺が手で軽くあしらうと、その男は何故か小さく笑いながら、その場を去った。
- 210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 04:01:15.43 ID:F106sh6go
- 男「ったくなんだった……」
朝の急いでいる時間を邪魔されたのが、不快だった。
男「って」
男「あああ―!!!」
先ほどたたかれた肩が、泥だらけに。
男「あいつ……!」
古典的な悪戯をしていきやがった。
しかも、その犯人はもう姿をくらましている。
男「ちくしょう……」
これでは仕事にいけやしない。
男「く、遅刻だが……」
一度家にかえって、服を取り替えなければ。
男「何てやつだ……、くそ……」
- 211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 04:04:51.60 ID:F106sh6go
- 0 ex
「あれ……、ここ……」
「病院?」
「わっ」
「ち、ちょちょちょちょ、どうしたんですか!?」
「な、な、なんですか、そんな突然抱きついて」
「こ、ここ病院ですよ!?」
「わ、しかもどうしたんですか!? その服」
「なんで汚れて……、あれ、お仕事は……?」
「ああ、ああ、ほら、なかないの、なかないの」
「ここにおりますよ、私はここにおりますよ」
- 212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 04:14:52.80 ID:F106sh6go
- それは、奇跡だったのだろうか。
男「家にもどったら……、君が倒れてて……!」
すぐに救急車をよんで、病院に運んでもらった。
男「よかった……、よかった……!」
俺は彼女に抱きつく。
女「もう……、いいこ、いいこ」
もしも、もしももう少し、遅かったら。
あの時家に帰っていなかったら。
>医者には一時間はやければなんとか、
>なんていわれて。
きっと彼女は、今は、もう――
俺は強く、まるで知っていたかのようなくらい、そう思った。
女「そんな、ちょっと倒れただけではありませんか」
男「そんな、こと……っ」
- 213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2012/10/10(水) 04:18:25.02 ID:9ssSp8aDo
- エロゲギャルゲやりすぎるとこうなるのかーかわいそうに
- 214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 04:19:20.91 ID:F106sh6go
- 俺は抱きしめた彼女を、さらに一度強くぎゅっとしてから。
男「俺も……」
男「俺も、愛していた……っ」
女「っ!?」
女「ど、どうしたんです急に……」
男「言ってなかったから……」
男「言わなきゃ……、今言わなきゃ、いけない、って……」
女「もう……」
女「どれだけ心配したんですか」
もうあとは、よかった、という安堵に。
ただただ睫をぬらすばかりで。
女「……」
女「心配かけて、ごめんなさい」
女「……私も貴方のことを」
女「愛しておりますよ」
- 215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 04:24:12.02 ID:F106sh6go
- これはもしかしたら、本当の世界ではないのかもしれない。
そんな想いが、どうしてかちらついた。
しかしその後、彼女と俺は、
つつがなく共に暮らしていけたから、
そんな想いはすっかりと、消えた。
その中で、不思議な話を聞いた。
男「現実逃避の、旅館……?」
女「……はい、覚えておりませんか?」
男「いや行ったことはないが……」
男「あ、でもあの日、現実逃避がどうとか、スーツのうさんくさい男に」
女「!? そ、それどうしたんです!?」
男「今充実してるからって、追っ払った。君も、いるし」
女「……ああ……」
彼女はとても、不思議な顔をして。
女「……そう、ですか」
でも、くすっと、微笑んだ。
- 216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 04:47:26.91 ID:F106sh6go
- どうやら話を聞くと
俺はその旅館にいて、そして彼女のことをお嬢さんなどと呼んでいたらしい。
十日間の呪縛とか、対価とか、メイドさんとか。
よく分からない話ばかりだった。
しかし、どうしてかその話が、嘘のようにも思えなくて。
カタギさんや芸者さんという人物にあってみた時には、
彼らもどうしてか見覚えがあるような、気がして。
もしかしたら。
あの日、もし家に帰らず彼女を逝かせてしまっていたら。
たしかに現実逃避を、
していたやも、しれず。
しかしそれはそれで、今俺のいる世界の話ではない。
今ここには、たしかに彼女がいる。
だから、俺は――
男「これからも……、よろしく、頼む」
――そう言って、彼女をめいっぱい、腕に抱きしめた。
女「……はい」
女「こちらこそ」
- 217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 04:51:34.38 ID:F106sh6go
- 支配人「このような世界があっても、良いでしょう」
支配人「貴方はそれを得るにたる、働きをみせたのです」
くつくつと、旅館の自室で腰掛けて。
支配人「ですからどうぞ胸を張って、その世界を歩んでください」
支配人「貴方がかけるべき一生は」
支配人「そのような世界で、正しい貰い手にささげるものなのです」
それは貴方が自力でつかみとった、それももう一つの正しい世界なのです。
ですからどうぞ、力強く。
貴方の掴み取った、幸せを、存分に。
支配人「さて、次の逃避者を探しに逝きますかねー」
彼らは、その後。
長く長く末永く。
彼の宣言どおり、一生をかけて。
幸せに暮らしました、とさ。
fin
- 218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 04:52:15.56 ID:/SFqIsl2o
- 乙
- 219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 04:53:13.02 ID:t4Q2Ygr70
- お疲れ様ー
- 220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/10(水) 04:53:26.74 ID:9gpij8nCo
- 乙 泣きすぎて涙枯れてしまいそうだよ
保守してた甲斐があった・・・ありがとう 本当に
- 221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 04:55:17.48 ID:wYhdJM1DO
- 素敵なお話をありがとう
お疲れさまでした
おやすみなさい。
- 222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/10/10(水) 04:55:26.31 ID:XW9nCkzb0
- やっぱハッピーエンドが良いよな、乙
- 223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/10/10(水) 04:56:31.93 ID:oG8JJBkvo
- お疲れさま!
いい作品に出会えて良かった!
- 224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/10/10(水) 04:56:41.34 ID:WAbxLlOho
- 乙
ちゃんと形にすれば売れるレベルだろ、コレ
- 225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 05:04:05.70 ID:zXI6o5VIO
- おつです
- 226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2012/10/10(水) 05:06:33.22 ID:6kARdZFAO
- お疲れ様でした!
- 227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 05:15:27.36 ID:fH4rjZ++o
- 乙ー。面白かった
- 228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 05:23:48.32 ID:F106sh6go
- お疲れ様でした、今回超ながかったですね
前回を超えて最長でございます
1スレで収まらなくてごめんなさい
次回以降はもっとコンパクトにするよう努力します……っ
付き合ってくださった皆様方、本当にありがとうございました
VIPにて保守してくださった方にも、心より感謝を
毎度のコトながら誤字脱字がやばいですね、見返すだけで心がくるしいです
でもとにかく、やっとこれをかけたので満足です
ずっと頭の中にありました(ずっとあったせいで長くなりました。たぶん)
細かいところとか思ってたことは明日ブログあたりでつらつらやるとおもいます
それではそれでは、お疲れ様でした!
また何か思いつきましたら、その際はよろしくおねがいします!
- 229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/10(水) 05:26:10.97 ID:9gpij8nCo
- リアルタイムで見たのは初めてだけど
今までのどの作品よりも好き お疲れ様!
- 230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/10/10(水) 05:44:17.22 ID:r34n5B8Wo
- 乙です
登場人物が強引と言ってるけどやっぱりハッピーエンドはいいですね。
- 231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 05:54:34.38 ID:U7Q6Yo1DO
- 乙
そういえば登場人物の対価はどうして選ばれたの?
童ちゃんとかの対価の理由が知りたい
- 232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 05:59:05.04 ID:MknC6dWIO
- サイドストーリーもよろしく!
- 233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2012/10/10(水) 06:02:03.19 ID:nfgRm+wco
- 超乙
ヤバい、マジで感動してる
すげえ良かった…
- 234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/10/10(水) 06:07:44.19 ID:431RjEMWo
- おつおつ
面白かった
ハッピーエンドで良かった
- 235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/10/10(水) 06:27:36.76 ID:q9EgtYLT0
- 乙!
久々に素晴らしい物語に出会えたよ
ありがとう
- 236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2012/10/10(水) 06:34:20.06 ID:Qvm5X91Fo
- おはようございます
VIPでもこっちでも乙でした
3連休の良い読み物になりました
- 237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県):2012/10/10(水) 06:47:44.21 ID:4B0xdeBh0
- 乙
すげー面白かった
おかげで寝れなかったよ
- 238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/10/10(水) 06:49:54.88 ID:UggsDPTIo
- おもしろかった乙
- 239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 06:56:29.61 ID:gC4UDjIXo
- 乙乙
- 240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 06:56:34.41 ID:z1Oy+sOCo
- 娼館と違って対価が良心的な悪魔…
- 241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 07:30:24.91 ID:J3TWOudgo
- 乙いっぱい→おっぱい
つまりはおっぱい!
- 242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北):2012/10/10(水) 07:32:31.02 ID:X+AgOxyAO
- 乙!
途中で寝てしまった…
またも伏線が凄まじい作品で面白かったです!
- 243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽):2012/10/10(水) 07:32:46.18 ID:S6JtYDNAO
- むちゃくちゃ感動した!
1乙!
- 244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 07:47:42.89 ID:J3TWOudgo
- そういえばこの人のぶろぐどこだー
だれかおしえろください
- 245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 08:07:21.53 ID:iMONVFsIO
- 面白かった乙
ただ外野のマナーが悪い
反省してほしい
- 246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/10(水) 08:23:26.92 ID:PiXihqj3o
- VIPから移住だから仕方ない
>>244
http://moeultimate.blog34.fc2.com/
これじゃね?
- 247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2012/10/10(水) 08:29:12.23 ID:X68uMZQ1o
- すごく面白かった乙
ただ、かなりの良作だったけど前作の保健室には及ばずといった感じだな
>>1の作品はいつも現実逃避がテーマになってるのかな
- 248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/10(水) 08:30:55.48 ID:pW8MwT4F0
- 乙
すごいとか言いようがないくらい素晴らしい話でした
- 249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/10(水) 08:36:44.12 ID:wa8A1GMi0
- >>1乙
久々に続きが気になるSSに出会えて嬉しかった!
楽しかったよ!
- 250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 09:03:49.87 ID:drXPOkKJ0
- 後で読もうと専ブラに取っておいたvipのキャッシュを読んで、
ここにたどり着いて、それからやっと今全部読み終えた
いやはやこのお話には圧倒されました
この何とも言えない読後感はしばらく続きそうです
ほんとありがとう!乙!
- 251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東):2012/10/10(水) 09:23:29.10 ID:82OWi8cAO
- この人は幸せで良かった!
脱出中〜前くらいまでが特に好き凄かったです乙でしたー!
- 252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北):2012/10/10(水) 09:39:47.89 ID:X+AgOxyAO
- >>246
だから愛してますにエクストラがあるとは…
- 253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 11:06:14.22 ID:jSe0i0HIO
- どうせなら1から見たい
- 254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県):2012/10/10(水) 11:19:56.06 ID:n8pfNvjqo
- 乙!
すげー面白かった
サイドストーリーとかあるのかな
あったら見たいな
- 255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2012/10/10(水) 12:12:42.63 ID:rhlvDk4jo
- 超乙 すばらしかった
とりあえず>>139は許さないよ
- 256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 12:58:50.39 ID:oWchUZGY0
- いちおつ
ゲームの方も期待してるぞ
- 257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県):2012/10/10(水) 15:06:58.77 ID:TRLuimR3o
- 一乙
次回作品以降もわざわざ一スレで終わらせなくてもいいんじゃ無いかな
一レスに収める為に話端折るのも勿体無いし
ともかくとても良かったのでブログも覗いてみようと思います
- 258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 16:02:17.79 ID:N6vDgOLDO
- >>1超乙
俺も現実逃避したい
- 259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 16:37:02.50 ID:J3TWOudgo
- >>246
thx
- 260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 16:37:39.82 ID:J3TWOudgo
- あげたすまん
- 261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 17:40:21.22 ID:2yzE+Ege0
- excellent!
圧倒的>>1乙
- 262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/10(水) 18:04:37.42 ID:F6tOBJfSO
- 忙しかったけど今やっと読み終わったわ
>>1乙
っつーかプロレベルだろコレ
- 263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/10(水) 20:16:26.31 ID:mkDYzGGko
- ハッピーエンドが好きな>>1で良かった
1-
100-
200-
256Gears Dat2Html ver.0.1.0